Focus On
吉永和貴
株式会社flixy  
CEO 内科医
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orお花屋さんになりたい。宇宙飛行士になりたい。ミュージシャンになりたい……。
幼い頃思い描いていた夢を、夢として追いかけ続けられた大人はどれだけいるだろうか?あなたは今好きな仕事ができているだろうか?これから好きな仕事に出会えるだろうか?
2040年、日本の労働力人口は約20%減少する(総務省調べ)。そんな未曽有の事態に立ち向かう会社がここにある。
新しい価値基準を創造し、すべての人の適材適所を実現させる株式会社shabell。同社が展開するCtoCキャリアシェアサービス「shabell」は、いまだ就「職」ではなく就「社」の意識が根強い日本において、「なりたい」と覚悟を持って職を選ぶ人を後押しする。夢に妥協せず仕事選びする人たちが、きっと日本の未来を変える奔流を生み出していく。
大学卒業後は株式会社ホリプロを経て、株式会社マイナビで新卒採用のコンサルティングに従事。入社以来7年連続表彰を達成し、当時最年少営業部長に抜擢されるなど功績を残したのち、2016年に独立。ずっと落ちこぼれだった時代を経て、自らが輝ける仕事と出会い、その出会いを社会にも創出していこうとする同社代表取締役の守岡一平が語る「すべての人の適材適所が叶う、社会に必要な新たな価値基準」とは。
堂々と自分の夢を語れる。がむしゃらに夢を追うことができる。大人に反対されても、夢に繋がる一歩を踏み出せる。自分が輝ける仕事と出会える。そして、挑戦し続ける……。
それらは正直誰にでもできることじゃない。多くの人にとっては、大人になり現実と折り合いをつけるうちに、手が届かなくなる物語。夢とはある種、それを手にした誰かの寓話のようなものになってはいないだろうか。
そもそも現代日本の新卒の就職活動に「夢」なんてあるだろうか?守岡はこれまでの人生で、その問題に立ち向かいつづけてきた。
「マイナビで7年半、独立して丸5年。新卒採用という領域で事業をやって、今が13年目。その集大成としての答えが『shabell(シャベル)』なんです」
マイナビでは中途入社3年で営業課長に抜擢され、課は3年連続金賞受賞。その後、当時最年少の29歳で営業部長に抜擢されるなど華々しい功績を残してきた。言い換えれば、それほど「仕事選び」に誰よりのめり込んできた。同時に、そこに至るまで誰より自分自身が仕事に迷ってきた過去がある。高校時代は音楽の道を考えたこともあったし、エンタメ業界への憧れで新卒入社したホリプロでは、望んだ職種に就けず挫折しかけた。そこでは、自分が本来やりたかった夢を忘れさせられ、生きてきたような気もしていた。
「新しい価値基準を創造し、すべての人の適材適所を実現させる」
そうコーポレートミッションを掲げ独立したのが5年前。守岡は、新卒採用をより良いものへと変えようと奮闘してきた。
100人、200人、500人、1000人……
一人ひとりの人生の選択に向き合ってきた。しかし、その道のりを進むにつれ、このままではコーポレートミッションを実現しきれないという焦燥感を抱くようになったという。
「これまで会社として延べ2万人の学生と面談してきたんですが、そこでは何をやっていいか分からないと言う子たちが毎年いっぱい来るんです」
少子高齢化に歯止めがきかない日本。2040年には労働力人口の約20%*が減少する見込みであるという(*総務省調べ)。これからの時代を生きる人は、一人ひとりが欠かすことのできない貴重な人材のはずだ。それなのに……。
日本の未来にとっての危機的状況は、守岡にとっての焦りと重なっていた。
「本来は(新卒の就職相談に)来ちゃいけないと思うんですよね。なんで来ちゃったんだろうと。そして、そんな子たちが来ても、根本的な解決をしてあげられてないことにコンプレックスがあったんです」
就職活動に迷い、将来に希望を見出せない若者たち。学生から圧倒的に多かった相談は、「新卒でどの会社に就職すればいいか分からない」というものだった。
そんなことあるだろうか?やりたいことなんて、誰だって小さい頃あれだけ描いていただろう。
思い出してみてほしい。ほんの数年前、小学校の卒業文集では「将来の夢」というテーマの作文を書いた人も多いはず。サッカー選手、パティシエ、お医者さん……。中学、高校では友人同士のたわいもない会話で、無邪気に語りあったそれぞれの「夢」。あの輝きと自由さはここにはない気がする。
目の前の学生たちは夢を語ることをしていない。「職」選びをしていたはずなのに「会社」選びを始めている。どこか、大人たちが決めたルールに気を使い自分を殺している気がする。
でも、もしも。もしも、夢を手放した若者全員が、好きな仕事と出会い働けたなら。失われようとしている20%の労働力人口を補えるのではないだろうか。AIや海外の労働力に目を向けずとも、未来を救う手立てとなりはしないだろうか。
守岡は、それを事業で実現できないかと考えた。
誰しもが好きな仕事と出会い働ける社会。やりたい人(適材)がやりたい仕事(適所)で働く社会。事業によりそれを実現させたい。
でも、そもそもなぜやりたい仕事に就くことができないのだろうか。大学に入り就職活動が始まると、やりたいことが分からなくなるのはなぜなのだろうか。なぜ行きたい「会社」に変わってしまうのか。
この歪みはなんなのだろうか。適材適所を実現する社会のために必要なことはなんなのだろうか。
答えは、夢に本気で応える大人との出会いだ。
夢ややりたいことに本気で向き合ってこなかった大人が子供の自由な夢に応えられるわけがない。まして子供の夢が自分の専門外なら余計に分かるはずもない。せいぜい応えられて、周知の確率論のお話だろう。厳しいからやめておけ、と。
そうして子供たちは就職活動で与えられる「会社」という選択肢から人生の道を探すことになる。
「要は、夢を相談できる人がいないということです。学校の先生に話したら『辞めときな』と言われる。親に話したら『は?』と言われる。だから、相談できる大人が周りにいる状態がつくれるのだという社会(価値基準)をつくる。相談先のない子たちを減らすことで、コーポレートミッションである『適材適所』を叶えていく」
何が厳しくて、どれほどの覚悟が必要で、どうやったら実現して、どうなったら諦めたほうがよさそうなのか。その道のプロフェッショナルが応えるほうが情報としてもきっと正しい。きっと子供の納得感も高い。
本気でぶつかってくれたプロがいたのなら、そして本気で自分の夢を考えられたのであれば、そこから挑戦しようとしたっていい。諦めたっていい。本気の大人に応えられたのであれば、きっとそれは本気の選択になる。
そういう社会をつくること。そのための事業なのだと思った。
実際に今、夢見た仕事で働いている人は、駆け出しの頃どのように人生を歩んだのだろう。イメージとのギャップはあるだろうか。親や先生を説得するには何が必要だろうか。尽きない疑問への答えを、これまで雲の上の存在だった第一線のプロに求めることで、夢追う人にとっての新たな価値基準がそこに生まれる。
将来の夢やなりたい姿を探す相談者が、その業界のプロ(社会人)と、オンライン上で直接話して質問や相談ができるキャリアシェアサービス「shabell(シャベル)」。相談者はプロの時間をお金で購入することで、その職のリアルや有意義な情報を基にキャリア選択ができるようになる。
2021年6月、サービス開始前で既に登録職種数は220以上。なりたい職業ランキングトップ100や日本の伝統職などが網羅されており、なかには「犬訓練士」「能楽師」「漁師」などユニークな職業もある。
対象となる相談者は大学生だけではない。高校生や第二新卒、夢を持つすべての人に使ってもらいたいと守岡は語る。
なりたい自分の未来と繋がれる、会える、そして決断できる。「shabell」があるから、自分で自分の人生を決められる。そんな場として機能する。
「僕はこれまで新卒の人材紹介事業をやってきたからこそ、よく分かったんです。無料相談をうたって実態は営利目的で大人が介入する。どうしても、大人の都合の力学が働いてしまう。それでは純粋な適材適所は実現できない」
今、新卒として就職後3年以内に離職する人の割合は、全体の3割にも上る(*厚生労働省調べ)。そのなかにはきっと、自分たちが企業に紹介した学生も含まれていると思った。
「そうではなく、自分の目で確かめて、自分の時間を割いて、自分が聞きたい情報に自分でお金を使わないと納得できないんです。適職は自分で本気になって見つけるべきなんですよ。それこそがピュアな人生の選び方だと思っていて」
思いはあるが背中を押してくれる人がいない。なりたい職はあるけれど相談先がない。なりたい未来像が見つからない。地方在住で身近な職が限られている。そんな環境に置かれた人に対し、近くの大人だけでは無理がある。現存の就職相談の仕組みでは無理がある。
誰もが将来なりたい姿を見つけ、行動を起こせるようにするには、整備しなければならない環境がある。憧れる人がそこにいて、純粋に相談に乗ってもらえる。堂々と相談して、自分の目で見て、自信を持って意思決定することが当たり前になる。漠然としたイメージで選択する世界から脱却し、「やりたい」という本質に根差した職業選択を可能にする。
「shabell」というプラットフォームが提供する新しい価値基準は、一人ひとりが真の適材適所を見つけられる社会を創る。
本気で「なりたい自分」と向き合う人、行動を起こそうとする人。その心に芽生えた勇気や一歩が自分の人生にもたらす意味の大きさを知る人であるほど、同じような立場にある人を応援したいと思うようだ。
相談者からキャリア相談を受けるプロは「shabeller(以下、シャベラー)」と呼ばれ、アプリ内から登録を受け付ける。なかでも「公認シャベラー」とされる人には、守岡自身が一人ひとり面談し、サービスの理念に共感してもらったうえで登録を依頼している。
「今のところ商談させてもらって9割くらいはOKをいただいています。特に強く共感いただけていると思う部分は、皆さんご自身の経験に紐づかせてるんですよ。自分もあのとき『shabell』があったら良かったと、皆さん言うんです。だからこそ協力したいと言ってくれる」
あるシャベラーは、スタイリストとしてL'Arc-en-Cielや中島美嘉の衣装などを手掛ける。スタイリストのなり方として確立された道はない。自分の場合、たまたま運よくL'Arc-en-Cielの衣装アシスタントとしてチームに入れたことが、今のキャリアを拓いてくれただけだった。現状そんな情報はどこにもない。だから、本気で挑戦したい人を導いてあげたいと語ったという。
「これまでは無料で行われてきたことなんですよね。親戚の子とか知り合いの紹介の相談には乗る。でも、SNSが普及してあまりに無料が増えてしまった。突然見ず知らずの人からDMで連絡が来ても、怪しさもあってなかなか返信しづらい。けど、世の中見てみれば、フリマアプリで見ず知らずの人に服を売ったりしているわけで。それってフリマアプリという信頼のプラットフォームが解決させている。なら、キャリアも同じじゃない?と思ったんです」
相談者とプロのあいだに「shabell」という安心で安全なプラットフォームが介在し、お金を払ってでも話を聞きたい本気の相談者と本気の「なりたい」を応援したいと思うプロが話をする。見ず知らずの人同士だとしても、本気の人たちだから身内にするかのようにぶつかれる。
「公認シャベラーの方々は、皆さんこぞってお金なんていらないと言います。なぜ、あえてプラットフォームとしてお金を取るかというと、1つは相談者の『プロの時間を奪って申し訳ない』という気持ちを消すため。もう1つは、本気で夢を追う人のスクリーニング機能として考えているからなんです」
あえてお金を介在させることにより、利用者同士の信頼を担保する。相談者が正々堂々と臨める場を創り、シャベラーが応援したいと願う本気の人たる証明をする。
純粋に夢を追う人と、純粋に夢を応援したい人を繋ぐ。そこに利害関係や就職活動の歪みは一切ない。「キャリア」という無形資産をシェアする文化をつくる、クリーンかつ公平なCtoCキャリアシェア・プラットフォーム。それこそが「shabell」の真髄である。
公認shabeller(シャベラー)の基準 ・仕事に誇りを持っている ・お金稼ぎが目的じゃない ・どんなに有名でも、世のため人のためを考えている ・相談を受ける行為自体に自己の充足感を求めない。純粋に人のためである |
相談者はshabellに利用料を支払い、相談後プロを評価する。プロには評価に基づいた報酬が発生するとともに、相談者を評価。キャリアを考える人にとって、新たな第三者評価の仕組みを創出する
守岡の人生にとって、「shabell」は必然的な帰結だったのかもしれない。
紀伊半島の山々に囲まれた、和歌山県北東部に位置するかつらぎ町。名産のフルーツと世界遺産にも登録されている丹生都比売神社で知られる。
暮らしの中で目に飛び込んでくるものといえば自然の緑。里山のふもとには民家。娯楽といえば家でテレビを観ることくらい。いわゆる田舎の風景が広がっている。
少年時代の守岡は、自然豊かな和歌山県で将来の夢を無邪気に描いていた。
「小学校のときの夢は総理大臣でした。ばかでしょ。遠すぎるけど、なれると思ってました。田舎なので逆に現実味がなさすぎて、発想自由な領域なんですよ」
身の回りの大人たち、代り映えのしない町。子どもが未来を想像するには、あまりに情報が少なかった。唯一テレビ画面の向こうの世界は、とにかく総理大臣が国のトップで偉い人なのだと教えてくれた。
それは突拍子もない目標のようで、きちんと勉強してほしいという両親の願いと結びつけられ、分かりやすい1本のレールとなったという。
「智辯和歌山に行って、東大行って、政治家なってみたいな。そうしたら(総理大臣に)なれるよと母親が言うんです。うちの母親がすごいのは、そこ言ったら絶対なれるよって言い方するんですよ。小学校高学年は、とにかく智辯に入ろうと本気で勉強していましたね」
慣れない猛勉強の末、無事に合格できた日の何とも言えない解放感。すべてが報われた思い。しかし、同時に夢はあとかたもなく消えていた。
「思いが軽かったんじゃないですかね。むしろ入ってみると周りの人間のレベルが高すぎて、そこから遊びに振れちゃうんですよ。いわゆる入学がゴールだったので、そこから糸が切れたように勉強しなくなるんですよね。中高一貫なので、中1から高3までひたすら遊びました」
不真面目な生徒。落ちこぼれ。262理論で語られるところの下位2割。進学校の中ではそういう存在として見られる。
気づけば学年を問わず下位2割で集まって遊ぶようになった。これが何より楽しい。勉強ばかりするなんて人生損してる。世の流行はバンドだ、音楽だ。そう信じていた。
当時はL'Arc〜en〜Cielが社会現象となっていた時代。ボーカルのhydeは、同じ和歌山県出身として知られている。地元から出たスターである。憧れであり、目標になった。
仲が良い落ちこぼれ4人でバンドを組んだのは、中学2年のとき。気づけば練習にのめり込み、オリジナル曲をつくるようになると次第に注目を集めはじめた。有名楽器店主催の大会では県で準優勝。地元の祭りで演奏すれば、観客が自分たちの音楽に熱狂しているのを肌で感じて嬉しかった。
本気でバンドを仕事にしていきたい。メンバーと熱く語り合った。けれど、子どもたちの夢に対して大人の目線は冷ややかだった。
「先生からは『何言ってんだ、大学行け』と言われるし、親も『智辯和歌山行ってるのに、ミュージシャンなんてあほか』と。もうそこから反抗期でしょ、僕は。もうばっちばちですよ。それで理解していくわけですよね。やりたいことと全然違う。無理やり(智辯に)入れやがってみたいな」
たしかに音楽で成功できるのは一握りだろう。食べていける保証はない。それでも、初めて本気で目指したいと思える夢だった。比べて勉強はやりたいと望んだことがない。学校では『開校はじまって以来のバカ』だと呼ばれていた。
落ちこぼれの自分が本気になれたこと。決して諦めたくはなかったが、諦めるしかなかった夢がそこにはあった。
If Story もしもあのとき「shabell」があったなら? — 高校生編 — ミュージシャンを志した高校生の守岡は、大学受験よりも本気になれる未来を見つけつつあったが、親に先生にも取り合ってもらえなかった。そんな周囲への苛立ちと、夢の1つ説得力をもって語れない自分への嫌悪。それらを抱えたまま、言われた通りの道をだらだらと進むことになる。 しかし、「shabell」があったなら、迷うことなくプロのミュージシャンに相談していただろう。実際駆け出し時代はどうなのか、楽曲を聞いてもらえるか。可能性があると認めてもらえたなら、少なくとも大人を説得する材料は手に入る。反対に認めてもらえないならば、すっぱりと夢を諦め、思い残すことなく前へと進むことができたのではないだろうか。 |
一浪して大学から上京することになった守岡。バンドメンバーはそれぞれの志望大学へと進み、別々の道を歩みはじめていた。守岡にとって夢見る未来の舞台は、次第に音楽からテレビへと移っていく。
「音楽って人に何か感動を届けるじゃないですか。感動を届けるっていうのは変わらなかったんですよ。ここからはエンターテイメントに特化して生きていこうと。自分が田舎のおじいちゃんおばあちゃんにも笑いを届けるような番組をつくりたいなと思ったんです」
自分はエンタメで生きていく。確信とともに大学生活は始まった。果たせなかった夢を今度こそ果たすべく、1年生の頃から就職活動を意識しはじめる。アルバイトはマスコミ一色に絞り、友達とコンビを組んで「M-1グランプリ」にも出場した。やればやるほど面白さを実感する日々だった。
「就職活動の時、僕はホリプロに入りたかったんです。『文化をプロモートする人間産業』っていう理念に共感して。文化をつくる人間の産業ってすごいかっこいいし、エンタメの真髄だと思ったんですね」
毎年新卒でホリプロにエントリーするのは約2万人。そこから内定をもらえるのは10人にも満たない。筆記テストの結果には自信が無かったが、なぜかあれよあれよという間に選考が進む。そうして人気の難関企業の内定を手にした。もしかしたら本当に自分は芸能が向いているのかもしれない。
そう思い始めたことが、あとから振り返れば落とし穴だった。
「僕は映像制作に入りたかったんです。それはもちろん希望に書きましたけど、配属されたのはタレントのマネジメントで。当時の僕はマネージャーなんてお茶くみだと思っていたんです。そんな風なので、ここでも『歴代最低のマネージャー』っていう位置づけになっていって」
お茶の間に笑いを届けるテレビ制作の仕事がしたいと、就職活動をしたはずだった。しかし、実際には会社の名前で就職先を選んでしまった自分がいたことに気がついた。
日本の新卒採用においては、ジョブ型雇用を取り入れる会社は少ない。会社の理念に共感して入社したからと言って、やりたい仕事に就ける保証はないのだ。必死に目の前の仕事と向き合ったつもりだが、気づけばここでも落ちこぼれという立ち位置だった。
こんなつもりじゃなかった……後悔しても、もう遅い。もちろんタレントマネジメントの仕事には未熟な自分を鍛えてもらったし、感謝したい人たちとの出会いもあった。それでも心の底には「なりたかった未来の姿」の残骸がいつまでも沈んでいて、忙しさの合間、ふとした折に意識へ浮かんでくるのだった。
If Story もしもあのとき「shabell」があったなら? — 就職活動編 — 田舎に笑いを届けるテレビマン。守岡の次なる夢も明確だったが、「仕事」ではなく「会社」を軸に就職活動したことで夢見た未来は潰えてしまった。一口にテレビマンと言っても、営業、報道、技術をはじめ職種は多岐にわたる。あとから考えればわかることだったが、学生という立場では就社することの鮮明なイメージを描けていなかった。 しかし、「shabell」があったなら、ストレートに映像制作会社で働く人に話を聞いただろう。憧れた制作職の世界が見えたなら、その会社への就職を目標としていたかもしれない。 |
思いがけない形で出会ったタレントマネジメントという仕事だが、その世界だからこそ学んだこともある。
テレビの中では輝いて見える芸能人も、中身は普通の人間なのだということ。マネージャーの仕事は、そんなタレントにいかに光をあて輝かせるか、そのために奔走することなのだと知った。
「たとえば、あるタレントは歌がうまくて可愛い。でも、その人も一般の人より劣っている能力はたくさんあるんです。ただテレビでは一部分をフォーカスして、多くの人の協力があって、ああやって輝いて見えるんです。人の才能って、一般の人でも出てないだけで、実はいっぱいあるんですよ」
人の能力はさまざまで、それが必ずしも表に出ているとは限らない。芸能人にとどまらず、一般の人もその能力が花開き、一人ひとり輝ける環境はあるはずだ。守岡は人材という領域に目を向けはじめ、株式会社マイナビへと転職。そして、営業という仕事と偶然出会った。
「(営業成績は)7年間、プレイヤー、マネージャー、課長と、どのレイヤーでも上位2割でした。それまでの14年間、どのフェーズでも、どの組織でも『守岡一平は落ちこぼれだ』って言われつづけてたのが、『あいつは優秀だ』って、一言役員から言われたんですよ。これがやめられなくなっちゃったんですよね」
大学生の時、守岡が一番やりたくなかった仕事は営業だった。それが実際には、営業は天職だと胸を張って言えるほど自分に向いている仕事だった。人生にエンタメという軸を持ちつづけた自分にとって、商談相手を笑顔にすることが何より楽しかったのだ。
新卒では「会社」を選んだ。しかし、望んだような仕事ではなかった。転職した時、営業は望んで選んだ「職種」ではなかった。にもかかわらず、知らなかった自分の才能が開花した。
そこで気づいたことがある。人にはそれぞれ違った能力がある。上位2割にも、もちろん下位2割にも。そして、その能力を花開かせるには「適材適所」が必要なのだということ。さまざまな組織で悩んできた守岡が行き着いた結論だった。
では、どうすれば「適材適所」を実現できるのか。仕事に向かいながら、考えるようになっていた。
当時、マイナビでの7年間はかけがえのない出会いにあふれていた。同僚や先輩後輩、学生、企業……。特に、クライアントとして深く付き合うようになった中小ベンチャー企業の経営者には同年代も多く、自分と比較せずにはいられなかった。
「トップを走ってきたから、マネジメントについては語れる。でも、経営について語れないことがコンプレックスになっていったんです」
社内では営業としてトップにいた自分が、社会という、より広い世界のなかでは小さな存在だったと気づいた。同時に、経営者とならなければ生み出せない、自分なりの価値があるのだとも。
これまでの人生で学んだことといえば、人には光を当てるべき場所があり輝かせ方があるということ。適材適所を実現すれば、人の能力を最大化できる世の中がつくれるはずだ。そのためには、旧来の価値基準だけでは足りない。これまでの社会で羽ばたく環境を見つけられなかった人をも導くには、これまでにない新しい価値基準をつくらなければ適材適所は実現できないだろう。
新しい価値基準を創造し、すべての人の適材適所を実現させる。
コーポレートミッションに恥じない事業をつくるべく、2016年、守岡はDiG株式会社を設立した。
If Story もしもあのとき「shabell」があったなら? — 第二新卒編 — ホリプロに入社してから丸2年が過ぎ、転職意思を固めつつあった守岡。テレビ1本で働く場所を探していた新卒時代と比べると、どんな仕事がいいのか何も分からなかった。マイナビ、そして営業職と出会えたのは偶然の要素も大きいと語る。 しかし、「shabell」があったなら、さまざまな職種で働く人たちと出会える。気になる職種があれば、まず話を聞いていただろう。会社で選んだ経験から、当時「企業で探す」は間違いなのだと知っていたからだ。「shabell」は第二新卒での転職を考える人にも役に立つ。 |
誰もが自分らしく輝きながら働く未来のために、そして就職活動自体を明るく楽しいものへと変えるために、新たな形の人材事業で日本を活性化できないかと模索してきた5年。
マイナビから「独立支援制度案件第1号」として出資を受け設立して以来、事業は順調に拡大していた。社員は30名規模に近づき、オフィス拡張のために2度の移転を経る。2019年には資金調達による増資も叶えた。
しかし、収益の柱としていた新卒人材紹介事業においては、やればやるほどに掲げた理想とは相反する側面が見えてきた。
「この事業をするすべての企業さんがそうだとは思いませんが、内定取ったけど行くか分からないから押し込むとか、この会社に行った方がいいと伝えるとか、やっぱり嫌なんですよね。学生さんも分かって来てるので、うちがエージェントだと思って頼りきる子が来る場所っていうのも嫌で。ボランティアだったらすごくいい仕事だと思ったんです」
会社は紛れもなくコーポレートミッションから生まれたものである。今やっていることが、そこから完全にずれているとは思わない。しかし、このままの事業を続けても達成することはない。そう気づきつつ、目を背けてきたのかもしれなかった。
「それが嫌だから新規事業作ってほしいと人に任せた。自分には作れない、営業しかできないと思ってたんです」
新たな事業をつくるため社外から役員を招聘し、既存事業で生まれる利益を投下する。新規事業の詳細は一任した。
この時点で社内には3本の柱があった。既存の新卒紹介部隊、守岡含む2名で担う営業部隊、新規事業部隊。そのうち守岡が直接管掌していたのは営業部隊のみだった。
「組織が縦割りになっていたんです。でも、それはこの人数でやってはいけないことだった。どれも僕が見ないといけなかった。だから壊れたんです」
既存の新卒紹介事業は、エース社員に任せていた。しかし、そこに穴が開いた瞬間、チームとしての機能が失われるまで時間はかからなかった。立て直しのためにCA(キャリアアドバイザー)として主婦のアルバイトを採用し功を奏するも、これまで頑張ってくれていた正社員からは反発が生まれる。
他方、できあがった新規事業も、ふたを開けてみれば未来の柱としていけるようなものでは到底なかった。
「○○だと思ってたのに、裏切られた」
辞めていく社員が後を絶たない。1年半かけて投資したが何も残らなかった新規事業。創業以来1人の退職者も出なかった会社から、最終的には役員含め16名のメンバーが離れることとなる。ちょうど世の中ではコロナウイルスが蔓延しはじめ、混乱のさなか売り上げも下降線をたどりつつあった。
こうして会社というものは落ちていくのだと思い知らされる。悪化していく損益計算書にもどこか見て見ぬふりをしていたが、当然そんなことも言っていられなくなる。
本来なら新規事業を黒字化させていく道筋を描いていたが、もはやそれも難しい。新しい人材を採用するべきだろうか?しかし、もう後がない。そもそも新規事業なんて言っていられる状況なのかも分からない。何よりそんな現状に対し、自分は何もできていない。
自身の経営能力のなさを痛感し、社員には見せられない内心の焦りが日に日に募っていく。
そんなある日のことだった。
何気なくつけていたテレビから、とあるニュースが流れてきた。番組では、OB訪問サービスでの性的被害について取り上げられていた。純粋に夢に向かう学生が餌食になっているという。そんな社会であることに、どうしようもなく苛立ちが募った。
歪があるところには、きっとチャンスがある。何かを変えたいと強く思って眠りについた。
***
「夢を見たんですよ。夜中に半分寝てて半分起きてる状態で。会議をやってる夢で、こういう新規事業どうよと僕が言っていて、皆がいいねいいねと言っている」
翌朝会社へ行くと、1枚のA3用紙に夢で見た事業構想を書き出した。それを社内のメンバーに個別で説明する。一人ひとりの反応が見たかった。口々に「いいですね」という返事が返ってくる。
この事業こそ、コーポレートミッションを実現するために必要な鍵だ。予感は確信に変わっていった。「shabell」が生まれた日となった。
2021年、shabellのメンバーと
2020年12月、守岡は経営者として1つの決断を下した。
立ち上げたDiG株式会社を自らの手で葬ること。人材紹介事業を手放し、社名も変える。全員で「shabell」をつくり、コーポレートミッションを成し遂げる。企業として新たなスタートを切る。
「そもそも会社というのは、メッセージを発信する基地だと思ってるんですよね。まずコーポレートミッションがあって、社長っていうのはミッションの奴隷第1号だと思うんです。誰より掲げるミッションを信じている」
守岡がまず覚悟を決めた。もう理念に嘘はつかない。
「そして生まれ変わった今そうなんですが、全員がミッションの奴隷になることが、組織として一丸になることなんだと思います」
解決したい課題や違和感があり、そのための箱としてつくられる会社。それをつくった時を思い返せば、取引先も商材も既に手の中にあった。すべてマイナビに在籍するあいだ築いたものだった。起業したと思ってきたが、実際は独立だったのだと守岡は振り返る。
自分に自信がないから、組織として強くなりたかった。そうでなければ、フリーランスでも良かったはずだった。だから、会社をつくった。個人ではなく、組織として影響力を発揮していきたい。
今ならできる。一丸となった組織でミッションに一心不乱になる。
「shabellとそこで働いてくれる社員は、僕のすべてですね。だからこそ、今残ってくれている社員には包み隠さず伝えていて。もうすぐ僕も39歳で、最後の挑戦だと思っているんです。年齢的にもスタートアップだと言える年は終わるし、若い子の考え方とか世の中の最新のニーズを踏まえたビジネス形成の最後の集大成になる」
現在、会社としての売り上げは対前年比で220%。一度は崩壊しかけ、半数以下になった組織でここまで立ち直り、過去最高の売り上げを達成した。それは社員全員の努力にほかならない。
守岡は「shabell」にすべてを懸けることに決めている。既存事業は手放し、人生最後の仕事として事業にコミットする。
その熱意は古巣であるホリプロをも動かした。同社がマネジメント契約を結ぶプロサッカー選手の槙野智章氏が、「shabell」イメージキャラクターに就任。2021年7月公開のWebCMにもキャスティングされた。リリース前の新サービスに有名タレントが起用されることは、異例中の異例であるという。
「これがだめだったときは考えてないですが、少なくともビジネスの第一線からは退くと思います。そのとき社員はほかの会社に入りたければ応援するし、『いやいや僕ら疲れたんで』っていうなら南の島で静かに暮らすかって言ってます。でも、そういう結果にならないと信じています」
会社とは、今ないものをつくり、より良い社会をつくるものであると守岡は考える。市場からお金を集め、社会に対して貢献し、それに対する収益を得る。そうしてミッションを最大化する。その証明として、shabellは上場を目指す。
2021年6年15日、shabellに社名を変える。
今、初めての起業をする。迷いは、何一つない。
守岡のInstagramより
夢や憧れはあるけれど、どうすれば叶えられるか分からない。身近に相談できる存在や、ロールモデルもいない。情報がないまま進路選択を迫られる。だから、諦めざるを得なかった。そんな若者を1人でも減らしたいと守岡は願う。
特に、地方の学生にとっての情報格差は深刻な問題だ。
大学の先輩に自分がなりたい職に就いた人がいなかったり、いざ話を聞くため会いに行くだけでも交通費や旅費が負担となる。ただ暮らしているだけで日々見て聞いて触れられる世界の範囲では、東京ほど圧倒的に情報量の多い場所は日本においてほかにない。
将来を決めるための情報や機会は、すべての学生に平等にあるわけではない。だからこそ守岡は、地方の若者にこそ「shabell」を使ってほしいと語る。
「この時代だからこそ、地方にいることを情報弱者だと思わないでほしいんです」
一昔前であれば誰かの紹介がなければ繋がることもできなかった人々と、オンラインで全国どこでも繋がれる。真剣に将来を相談できる。「shabell」は社会に新たな解決策を提示する存在となる。
かつて守岡も大学受験を前にする高校生だった頃、バンドで音楽の道に進むことを考えていた。親にも先生にも取り合ってもらえなかったが、あの頃もし「shabell」のようなサービスがあったなら。そんな思いがサービスづくりの原点にもなっている。
「音楽で食べていけなかったらどうするんだとか、あわよくばCD送ってもいいかとか僕なら聞くと思います。この楽曲で闘っていけるのか確認して、OKならこのままバンドやっていこうと決める。親とか周りを説得する材料は揃うと思うんです。逆に、もし難しいとなったらセンスがなかったなと思って、大学受験に対して真剣になれる」
ただ第一線で活躍する人の言葉を探すなら、本やYouTubeなどの選択肢があるかもしれない。地方でも手に入る情報源だ。しかし、そこでの学びが自分にも当てはまる話かどうかは分からない。
世の中で語られる常識や一般論ではなく、今まさに自分が必要とする疑問への答え、オリジナルな回答が「shabell」を通じて得られる。
そこでは現実の厳しさを突き付けられるかもしれないし、努力が足りないと焦燥にかられるかもしれない。想像と違っていたと失望する可能性だってある。とはいえ、いずれにせよ夢に対する自分の正直な思いが見つかるはずだ。
前進か、諦めか。「shabell」での体験を通じて何を思うのか。それこそがきっと探していた答えであり、自分自身の人生を切り拓くための覚悟となっていくのだろう。
「shabell」WebCMより
サービスリリースに向け奔走した数か月間、そしてリリースから現在まで、その過程では意外な発見があったという。
「僕ら毎日感動してるんですよ。(公認シャベラーに登録してもらうために)よくこんな100人200人と話すねとか言われることもあるんですけど、いろんな職種の人と話をさせてもらうなかで、誰より僕らが一番感動してるんです(笑)」
はじめのうちは知り合いの紹介から、現在ではInstagramやTwitterのDMから公認シャベラーとなってくれる第一線のプロにアプローチしているという守岡。公認シャベラーとなる人とは、欠かさず一人ひとり面談し共感を得ているという。
純粋にその職を夢見る若者のためになるサービスをつくりたい。面識のない間柄ではあるが、そうして思いを語りつづけていくうちに、共感してくれるプロの反応として1つの共通項が見えてきた。
「徳島のトリマーの方だったんですけど、トリマーなので普段はほとんど犬としかコミュニケーションしないけど、キャリアを積んでいくなかでこの楽しさをもっといろんな人に広めたいと思うようになったらしくて。この職種を目指す人を応援してあげたい、もっと育てていきたいんだと言っていただけて」
「shabell」のコンセプトに共感してくれるだけでなく、こんなにも多くのプロが夢追う若者の背中を押したいと考えてくれている。その事実は、何よりサービスが社会に必要とされるものであることを確信させてくれた。
夢に向かう純粋な思いと、それを後押しする純粋な思い。両者が結ばれれば、そこに雇用が生まれる可能性すらある。守岡はそれでもいいと考える。「shabell」は、チャンスを自ら掴もうとする人を応援していくプラットフォームとなる。
「本気の子を本気で応援したい。大人って、本気の子には本気で対応するんだよということを伝えていきたいんです」
本気の子を本気で応援する。そんな大人たちが「shabell」には集まっている。
「改めて言いたいのは、結局日本人って遠慮しがちなんですよね。すごいプロの人の時間を取って申し訳ないとか、僕なんかが質問していいんだろうかとか。自分は夢を持ってるけど、叶えている人から見たら弱いじゃないかとか。そういうことは思う必要ないんじゃないかなと。お金で時間を買ったんだし、その時間は全力で怖がらずにしゃべって質問してもらいたいです」
自分を卑下して、目上の人の時間を奪うことに躊躇してしまいがちな日本人。しかし、お金を払い、買った時間であるのであれば、まぎれもなく正当な自分の時間となる。遠慮の必要性はどこにもなくなる。
なりたい仕事があるのなら、夢があるのなら、まずはその道の先輩に堂々と話を聞いてみればいい。夢に本気であるならば、本気で応えてくれる人はいる。
そんな価値観が当たり前となる未来のために、shabellは未来を本気で掴もうとする人にとっての夜明けとなる。
shabellオフィスの風景
2021.09.02
文・引田有佳/Focus On編集部
世の中にはきっと必要なのだが、存在していないものがある。きっと必要なのだが声にすらなっていないものもある。はたまた、必要ないのだが存在しているものもある。
「未来を予測する一番の方法は未来をつくり出すことだ」
どこかの偉人がそう語ったように、未来をつくり上げようと人類は技術の進化を進めてきた。
電球、自動車、飛行機、携帯電話、インターネット……
これらは私たち人間の生活を変化させた。電球により夜が生まれ活動時間が長くなり、自動車や飛行機により移動時間が短縮され、インターネットにより世界中への即時アクセスが可能となった。
「便利さ」のためと思ってだろうか、それらを生み出した人々は何かへの情熱に突き動かされ、人の物理的豊かさや余裕を創り出してきている。
人がそれを望み、技術がそれを叶えてきた。
「技術と人」これらの相性はきっとよかったのだろう。技術に愛された人が技術を進化させ、技術が人々を便利にしてきた。
しかし、今はこの構図も変わっているのかもしれない。そう思わせる人々が現代には生まれてきている。
たとえば、昨今の起業家の資質のキーワードとして時に挙がる「政策起業力」という言葉も、そのうちの一つだろう。何かを叶えるための技術は今の世の中に揃っているが、政治的事情などで世の中に実現していない事象を事業として社会に叶えるための力の話である。
技術と人の関係における物理的な豊かさの創出から、人と人の関係における非物理の豊かさの創出への転換へ。人と人の間にあるものを変化させていくことで、社会の豊かさを叶えていく人が現代の進化のためには希求されているように思える。
社会の枠組みの中に存在している慣習や前提、ルール。それらのほとんどは人が生み出し、人が利用し続けているものであり、だからこそ、技術の進化で解決するものではなく、人と人の関係で解決しなくてはならない類のものである。
それら非物理の豊かさや、非物理による不合理を解決するためには、(かつては技術に愛された人が進化を牽引したように、)人に愛される人が、人と人の間にあるものを変化させ人々を豊かにしていくのだろう。
それを進めているのが守岡一平なのだ。
守岡一平には覚悟がある。「最後の起業」と自らに言い聞かせ。いや言い聞かせているのではなく、事実としてそうである状態に置き、周囲を巻き込んでいく。
一人ひとりに社会のあるべき姿を説き、それらをshabell/シャベルによって形にするのだと。
非物理的な変化のために、一人ひとりから共感を得ていく。人と人の間にあるものを変えていく。ただ共感を得るだけでは一瞬の変化に過ぎなくなる。持続可能性に欠ける。だから、人々の当たり前にする。
当たり前とは難しい。それは、説得でも、納得でも十分ではない。存在への転換が必要なのだと思う。あたかも元から存在したかのように、転換させていく。
私が、初めて守岡一平と出会ったのは5年前。
渋谷の宮益坂を登りきった大通りを小径にそれて、わかりにくい入り口から上がる事務所。誰しもを油断させるあの笑顔とともに、嬉しそうに夢を語っていた。
そして今も夢を語っている。
そうなのだろうか。今も語っているのか。いやそうではない。きっとこれは夢ではない。
今私が見ているのは、あたかもそれが未来の当たり前として存在している事象のように、未来の事実として読み上げるかのように語る守岡一平だ。既にあるものを読み上げるかのごとく、shabellの未来を語っている。
これは今ここで起きている。現実の話なのだ。
文・石川翔太/Focus On編集部
株式会社shabell 守岡一平
代表取締役CEO
1982年生まれ。和歌山県出身。明治大学商学部商学科卒業。新卒にて株式会社ホリプロ入社。タレントマネジメントに従事。株式会社マイナビに中途入社し、新卒採用のコンサルティングに従事。500社以上の新規開拓を行い、当時最年少営業部長に抜擢。7期連続で個人だけでなく部署でも表彰される成績を残す。2016年DiG株式会社設立。代表取締役就任。2021年、株式会社shabellへと社名変更。