すべては人のこころの内側からはじまっている ―「Focus On」リリースに寄せて



テクノロジーが加速度的に発展しつつある昨今、人間と機械の境目について語られることが多くなりました。なかでも機械学習やディープラーニングと呼ばれる、脳内の情報処理の仕組みを模した演算機能を搭載した人工知能は、あたかも人間の脳のように働き(ときには人間以上の計算能力をもって)、私たちの暮らしを激変させようとしています。


人工知能によって、ある決められた領域を集中的に学習する能力をもたらされた機械は、膨大な情報から自ら繰り返し学習し、そこから何らかのパターンや経験則を導き出し、当てはめていくことで、自律的に解にたどり着けるようになります。しかし、ある領域で学習したパターンや経験則を、他の領域に応用することはできません。そこに機械の限界があります。それを可能にする転移学習(トランスファーラーニング)と呼ばれる技術は、いまだ研究段階にあり、うまくいくものとうまくいっていないものが存在するといわれます。


そもそも人類はその進化の歴史の中で、「事象から役立つものを抽出し、学びを得る」力を発揮してきました。人工知能の世界において、そのメカニズムは、「特徴量」と呼ばれる概念で説明されます。「特徴量」とは、入力されたデータにどのような特徴があるかを数値化したもので、この数値化・抽象化された特徴を読み取ることで、初めて機械は学習できます。


抽象化し特徴を学びとり、そのほかの活動にその学習を転用すること。これは、人間の重要な能力の一つであり、同時に人工知能の根幹設計を支える技術となっているのです。つまり、原理や原則を学び、時代にあわせて力に変え社会に提供していくことこそが人間の持ちうる力であり、人間が人間足りうる力だったといえるのです。人間だからこそ、スポーツの戦い方を経営に活かしてみたり、映画や漫画から得た教訓を、明日の仕事のための学びや力に変えることができるのです。


人類の進化の歴史を紐解いていくと、すべての物事は、人の思いや考えからはじまっています。誰かが何かを考え、願い、行動が生まれ、時代が創られてきました。


“世界のトヨタ”を生み出した豊田佐吉も、幼いころ、母が手織り機で織物に苦労する姿を見て「よくしたい」と願い、それをきっかけにして、トヨタ自動車の前身・起源である豊田自動織機が生み出されました。その子、豊田喜一郎がトヨタ自動車を世界のもの足らしめたのもまた、こころの内側から湧き出る「思い」によるものでした。


人は「こころの内側」をきっかけとし、世の中を良くするのです。そして、そこには後世の人の学びに変わる、人間や社会の原理や原則が、あらゆる角度や階層に存在しているものであると考えております。


テクノロジーの進歩により目にすることが多くなる、人間本来の力と人間に近づく機械の力への言説。そんな差異に目が留まる時代だからこそ、より一層、人間が本来の持ちうる力に立ち返り、それを学びに変えられる場があってもよいのではないでしょうか。


未来を生み出す方法はさまざまです。物理、化学、生物・・・といった自然科学からのアプローチもあるでしょう。政治、法、経済、経営・・・といった社会科学からのアプローチもあるでしょう。ただ、その根底には物事の原理原則が存在します。それは、どんなに学問が進化しても、テクノロジーが進化しても、人間が進化しても、変わらずそこに存在するものであると考えております。


Focus On(フォーカスオン)は、新たな時代にも風化することのない「知」を提供していきたいと考えております。皆さまの良き読書体験を通じて、未来をつなげる一助となるようこころを配り、運営していく所存でございます。


ご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。