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「社会のために」を解き明かす向社会的行動の探求―22世紀の社会のために必要なこと

向社会的行動とは?


Mussesn & Eisenberg-Berg(1980)によれば,向社会的行動は「外的な報酬を期待することなしに,他人や他の人々の集団を助けようとしたり,こうした人々のためになることをしようとする行為のことである」と定義される。―愛知学院大学 鈴木 隆子


「この社会がもっと良くなれば」「もっと社会がこうあれば」と、人は誰しも社会へ思いを馳せるものです。集団を形成し生活を営む人間だからこそ、その活動のなかで社会の形成に思いをのせています。かの哲学者アリストテレスも、その『政治学』において、ほかの動物が保有することのない独特のものとして、善く生きることを目指す共同体(社会)を、そしてそれをもつ人間の存在を語りました。


大なり小なり人間は、「こうだったら」「もっとこうなれば」と社会を考えます。しかし、明日を生きるのに困ることが少ない現代社会においては、その思いを行動に移し、社会に反映させられる人はそう多くはないのかもしれません。疑いなく明日も生きられるからこそ、その大きな流れに身を任せ生きてしまうのかもしれません。


かつて戦後の日本では、(当時の教育的背景を別にしても)「日本という社会をどうにかしたい」と声をあげ、思いを行動に変える人々が「日本」という社会単位で存在していました。だからこそ、戦後の焼け野原から復興し、アジアでもいち早く先進国の仲間入りを果たせたことも事実なのではないでしょうか。


そんな先人たちの築いてきた歴史の恩恵を享受しているからこそ、今日なお社会に向かう人々に対し、憧れや尊敬の眼差しが向けられるのではないでしょうか。


向社会的行動の発見と拡大


私たちフォーカスオンは、人である誰しも「社会に向かう行動」をとることができると信じています。向社会的行動は、一部の特殊な能力をもつ人々だけのものではなく、万人のものなのです。只、それにはちょっとしたきっかけや勇気が必要なだけなのだと考えています。


現代に生きる向社会的行動をとる人々。その半生を物語とし、読み手にとってのきっかけに変えることが、私たちの願いです。(当メディアでは読み手がそのきっかけを再現できるように、「意思決定構造の3階層」を探求しています。※参考記事→『意思決定構造の「3階層」とは?―イノベーターは何を考えて生きてきたのか』)私たちフォーカスオンが出会い、綴るのは、同じ時代に生きる人々の物語です。だからこそ、与えられる勇気やきっかけも大きなものになるのではないかと、私たちは考えております。


人生のなかで手に取る本や出会う人が、誰かの道を照らすように。フォーカスオンに巡り会った人々が、より善い生き方を追求するヒントを得て、行動に変えていくこと。結果、社会に対する「もっとこうなれば」という願いがカタチに変わり、社会の進化がより加速していくことを思い描いております。


向社会的行動が人ひとりにもたらすもの


向社会的行動をとること、それは同時に、人が多くの力を得ることすら可能にするものであると考えております。事実、フォーカスオンで取材させていただく社会に向かう人々は生き生きと、誇りをもって生きているように思えます。


「陰徳を積む」というように、人知られず良いことをする時にこそ、崇高な道徳感情から自尊感情が高揚すると言えよう。―相模女子大学人間心理学科教授 尾崎 真奈美


社会に向かう行動は、人に喜びと自尊心を与えるのです。


それが増えることで、生き生きとする個人を増やしたい。その活動が社会を良くする原動力となり、社会に良き循環が生み出されるようにしたい。


社会に向けた行動を誰しもがとれるようにする。人の行動から社会を変えていく。人の心へのアプローチから、社会により良きものが生まれつづける土壌を創り出していく。それが紡がれていくことで、私たちが生きるこの時代のみならず、22世紀の社会を支えてくれることを願っております。




※引用

鈴木隆子(1992)「向社会的行動に影響する諸要因:共感性・社会的スキル・外向性」,『実験社会心理学研究』32(1),日本グループ・ダイナミックス学会,<https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjesp1971/32/1/32_1_71/_pdf/-char/en>(参照2018-1-10).


尾崎真奈美(2013)「ペイ・フォワード『与える喜び』実践の向社会的行動促進効果」,『人間社会研究』10,人間社会学部研究誌編集委員会編,<https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20180105223746.pdf?id=ART0010042637>(参照2018-1-10).


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