Focus On Focus On 江口亮介 プロソーシャルな距離/個人の仕事術編

リモート時代の「個の仕事力」― 個の時代の個人戦略



当たり前だった価値観「オフィスで働く」が、COVID-19により様変わりした。この数か月間、多くの企業が不透明な未来を見据え、リモートワーク/テレワークをはじめ組織運営における試行錯誤を重ねている。

そんななか、設立当初からオフィスを前提としない働き方「ウルトラリモート」を採用し高い生産性を保ってきた不動産Techスタートアップ企業がある。

株式会社TERASS。テクノロジーとデザインで暮らしを美しく自由にする同社では、信頼できる不動産エージェント個人を見つけ、家を探すというエージェント提案型家探しサービス「Agently(エージェントリー)」、ハイエンド不動産メディア「TERASS」を展開している。そこにあるのは、CEO江口亮介の「個が活きる世界にしたい」という信念だ。

本シリーズでは、事業においても組織においても「個」を大切にしていく同氏に、今だからこそ見つめなおすべき「組織のつくり方(前・中・後編)」と「個人の働き方」のヒントを見つけたい。



 シリーズ「プロソーシャルな距離」について 
世界が今、こういった状況だからこそ、「知恵」を繋げたい。
私たちFocus Onは、社会のために生きる方々の人生を辿って物語と変え、世の中に発信して参りました。そんな私たちだからこそ、今届けられるものを届けたいと考えております。社会に向けて生きる方の知恵の発信により、不透明さを乗り越えるための「知」の繋がりをつくりたい。それがどこかの、どなたかにとっての次へのヒントになれば。そう考え、本シリーズを企画し、取材のご協力をいただいております。






全世界でCOVID-19が拡大し、国内でも緊急事態宣言が発令されたことにより、リモートワークで働く人はかつてないほどに増えた。


当たり前のようにオフィスに通勤し、仕事をして、同僚と雑談する。そんな生活が様変わりした現在、個人の仕事はその「生産性」に注目が集まるようになってきている。


このような時代だからこそ、「貴方が」する仕事の価値を高めるための戦略的な思考を持ちたい。








江口亮介から学ぶ 個の時代の個人戦略


01【時代変化】行動単位が小さくなっている

02【働き方】「ブルーカラー的ホワイトカラー」より「ホワイトカラー」

03【習慣】日常が訓練になる




01【時代変化】行動単位が小さくなっている


スマートフォン一つで写真や動画を撮って、SNSやYoutubeにアップする。難しい技術は必要ない。やりたいと思えば、誰でもそれができる。個人が直接社会と繋がれる。まさに個の時代がやってきたと、江口は語る。


「個人で情報発信しやすくなったことが、大きなパラダイムシフトだと思っていて  。インスタグラマーで稼いでる人もいるし、自分でコードを書いている人、Youtubeをやっている人もいる。行動できる単位がどんどん小さくなってきて、個人の選択肢が増えている」



技術の進歩は文化の変容を生み、私たちの行動単位を小さくした。


たとえば、芸能人を志す人がいたときに、昔は事務所に所属するしか選択肢がなかったかもしれない。しかし、今はそうとも限らない。まずはSNSで自らを発信し、世の中と直接繋がりながら個人を社会に発信し、有名になることもできる。


「これまでは個人が組織に属する意味を考えなくてよかったということでもありますね。とりあえず就職すればよかった。でも、選択肢がどんどん増えていくなかで、組織に属する意味は若干薄れつつある」


2018年には政府の発表するモデル就業規則から「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」の一文が削除された。副業が加速し、個人の働き方の自由度はさらに高まっている。今なお多くの人が闘うCOVID-19の影響によるリモートワークの加速も、組織に属することと個人が働くことの再考を迫るものでもあろう。


時代は私たちの行動単位を小さくしてきた。組織に所属しているか否かにかかわらず、能力さえあれば社会に接点を持ち価値を生み出していける。それが当たり前になっていく社会では、組織にあったとしても個の仕事の価値には一層焦点が当たるようになる。


もはや組織に所属することはゴールではない。改めて、個々が組織の中で生み出す価値とは何かを考えなければならない時代になっているのではないだろうか。



02【個の価値を生む働き方】「ブルーカラー的ホワイトカラー」より「ホワイトカラー」



あなたの仕事には、あなたにしかできない仕事の創造性がどれだけあるだろうか。「ホワイトカラー」「ブルーカラー」といった言葉も存在するが、これからの時代、自分の仕事の価値を意識することは、あらゆる職種にとって共通の問題となるだろう。


「僕はよく『ブルーカラー的ホワイトカラー』と言ったりもするんですが、会社で働いているけど、やってることは実はルーティンだけという人も多いと思っていて。そういう人は世の中には絶対的に必要ではあると思うんですが、世の中全体としては今後減ってくだろうと思っています。それよりまさにスタートアップのように、世の中に新しい価値を生み出したり、考えて工夫してアイディアを実現する、知的プロセスがすごく大事になってくる」


あらゆるサービスが飽和状態となった今、社会に新しい価値を生み出すことは重要である。それをゼロから創り出すこともそうだろう。同時に、ブルーカラーといわれる仕事であっても、その中で創造的な挑戦をしていくことがより価値とされていく(それはホワイトカラー的ブルーワーカーと呼ぶようになるのかもしれない)。もはや職種的な区分けの言葉の意味は失われていくのかもしれない。


そう考えると「ブルーカラー的ホワイトカラー」という言葉は、「ホワイトカラー」だからと安住し、自らの仕事の価値の思考をしない者への警鐘であるようにも思える。では、私たちが個で価値を生む仕事をするためには、どうすればいいのだろうか。


「職種によっても違うと思うのですが、一つは付加価値を出し続けることだと思います。自分じゃなきゃできない仕事をどれだけやるか、そのために僕が常に意識するのは、全ての行動に意図を持つことです。自分の行動全てになぜそうしたのか、理由がない人はあまり仕事ができないと思っていて。僕がマッキンゼーに入ったときにも、資料全てに意味があるべきだと教えられたし、そこまで考えて生きなきゃなと思わされたんですよね」


資料のメッセージから要素の順番、配色に至るまで、あらゆる行動の理由を考えること。それをどんな些細に見えることでも考える。一見ルーティンに見えることでも考える。そうでなければ、受け手に「なるほど、面白い」と思ってもらえる仕事は生まれない。


社内でフィードバックをもらうときにも、なぜその選択をしたかが考えていなければ、言われたことをただ当てはめるだけのルーティン仕事になってしまう。


全てに意志を持ってやる。だから、創造的価値を生み出していけるようになる。そうして自分だけの仕事の価値が生み出せるようになる。江口がコンサル時代学んだ意志の大切さは、どんな仕事にも普遍的に当てはまるものだといえる。



 POINT 
・ 自らの付加価値を出し続ける
・ そのために全ての行動に意図を持つ



03【価値を生む個であるための習慣】日常が訓練になる



全てに意志を持ち、仕事の付加価値を生む「個」であること。とはいえ、誰でもできるものなのだろうか。


これまで仕事上で意識してこなかった人が、新しく自分の意識にしっかり根付かせ、思考を習慣化していくためにはどうすればいいのだろうか。


特に、インプット重視の教育システムがある日本では、自分で考えアウトプットすることが苦手な人も多いといわれる。不慣れだった人でも、果たして個として全てに意志を持つことができるようになるのだろうか。


「日本の教育も徐々に変わっているとは思いますが、別の理由でも今後は  考えられる人が増えていくんじゃないかなと思っています。なぜかというと、個人で発信できるものが増えたからです。FacebookやInstagram、Twitterでつぶやくときって、みんな考えながらやってるじゃないですか。どうしたらリア充っぽく見えるかなとか、アングラっぽく見えるにはとか、人によって色んな思惑をもって発信しているはずです」


訓練の機会は日常にある。それを仕事に転換して考えてみればいいのではないかと江口は語る。


「そこに対して、いいねとかハートとかフィードバックが返ってくる。それって考えるプロセスそのもので、習慣はできるんだろうなと。社会インフラが変わってきているので、昔の人よりはしやすい土壌があるのではないかと思います」


組織に所属している人も、そうでない人も、誰もが個として意志をもつ。今生きる私たちにとって、目の前の日常にその場がある。それが、個としての仕事の価値を高め、不確実な時代を生き抜く力に変わる。


個の発信力が強まった時代では、誰しもその一歩を踏み出すことができる。いや、もうすでに一歩目は踏み出せているのかもしれない。


「あなたはなぜ、それをやるのか」。あらゆる選択の前で、今こそ問い直してみたい。



 POINT 
・ 日常の活動からはじめてみることで習慣化する




2020.06.12

文・Focus On編集部




江口 亮介

株式会社TERASS 代表取締役CEO

東京都出身。慶応義塾大学経済学部卒業。2012年に株式会社リクルートに新卒入社(現リクルート住まいカンパニー)し、SUUMOの広告企画営業として、約100社以上の不動産ディベロッパーを担当。その後、売買領域のMP(Media producer)として、SUUMOの商品戦略策定・営業推進・新商品開発などに関わる。2017年にマッキンゼーアンドカンパニーに入社し、戦略・マーケティングを中心とした経営コンサルティングを手がけた後、2019年4月に株式会社TERASSを創業。個人で3回の不動産購入、2回のフルリノベーション、2回の不動産売却を経験。

https://about.terass.com/