Focus On 江口亮介 プロソーシャルな距離/組織内コミュニケーション編

中編 | Superb Teamが実践する組織内情報の扱い方TIPS3選



当たり前だった価値観「オフィスで働く」が、COVID-19により様変わりした。この数か月間、多くの企業が不透明な未来を見据え、リモートワーク/テレワークをはじめ組織運営における試行錯誤を重ねている。

そんななか、設立当初からオフィスを前提としない働き方「ウルトラリモート」を採用し高い生産性を保ってきた不動産Techスタートアップ企業がある。

株式会社TERASS。テクノロジーとデザインで暮らしを美しく自由にする同社では、信頼できる不動産エージェント個人を見つけ、家を探すというエージェント提案型家探しサービス「Agently(エージェントリー)」、ハイエンド不動産メディア「TERASS」を展開している。そこにあるのは、CEO江口亮介の「個が活きる世界にしたい」という信念だ。

本シリーズでは、事業においても組織においても「個」を大切にしていく同氏に、今だからこそ見つめなおすべき「組織のつくり方(前・中・後編)」と「個人の働き方」のヒントを見つけたい。



 シリーズ「プロソーシャルな距離」について 
世界が今、こういった状況だからこそ、「知恵」を繋げたい。
私たちFocus Onは、社会のために生きる方々の人生を辿って物語と変え、世の中に発信して参りました。そんな私たちだからこそ、今届けられるものを届けたいと考えております。社会に向けて生きる方の知恵の発信により、不透明さを乗り越えるための「知」の繋がりをつくりたい。それがどこかの、どなたかにとっての次へのヒントになれば。そう考え、本シリーズを企画し、取材のご協力をいただいております。






前編では、組織と個人のパフォーマンスを最大化させるための「経営者の意志」と「従業員のオーナーシップ」、オーナーシップが育まれる組織の条件について紹介した。

>>前編 | ウルトラリモートワークに学ぶ―リモートで生産的な組織にある2つの「意志」



では、具体的に何が効果的な組織運営を実現しているのか。


TERASSでは、組織における全ての情報をストック(蓄積されていく情報)とフロー(日常の会話などの蓄積されない情報)に分け、それぞれの役割と目的から、最も効率的な状態をつくるためのルールを定めているという。ウルトラリモート組織が実践してきた、組織内部の情報/コミュニケーションにまつわる仕組みと具体的なツールを紐解いていく。







Superb Teamが実践する組織内情報の扱い方TIPS3選


01【基本のルール】コミュニケーションは全て文書に残し共有する

02【ツール】TERASSに議事録は存在しない。ストック情報は「Notion」に

03【雰囲気づくりの工夫】「雑談」を仕組み化する




01【基本のルール】コミュニケーションは全て文書に残し共有する


重要な意思決定がなされる経営会議から、上司と部下の1on1、あるいは仕事には直接関係のない何気ない雑談まで。あらゆる組織活動に「意図」を持つことの重要性を語る江口。


組織を循環する血液と言える「コミュニケーション」は、とりわけ慎重に取り扱う(リモート環境下においては、組織内で交わされるさまざまな情報へアクセスすることのハードルが物理的に高くなることから、より慎重な設計が求められると語る)。


「『ちょっと二人で話して決めました』みたいなことがあると、その情報ってほかの人は見えないし、忘れられていったりして、リモートだと非常に効率が悪いんですよね。そういう風に面と向かって話すのが大事なこともあるのですが、じゃあそこでは『何が決まって、次に何をするのか』、弊社ではコミュニケーションは全て文字に落として共有することを、ルールとして徹底しています」




■全て文字に落とす

大小にかかわらず、誰かと誰かのコミュニケーションで交わされた情報は、「全て文字に落とす」ことで認識漏れや齟齬をなくしていく。文字化をルールとして明示的に共通認識にすることにより、会議での無駄が仕組みとして省かれていくのだ。


さらに、そこに紐づく個々のアクションが明確であることも大切だ。「誰が、何を、どれぐらいのものを、いつまでに、をしっかり握って明確にする」と江口は説明する。


文書で残し、ネクストアクションを明確にする。文字化のルールの存在により一つ一つの会議の質が高まり、結果個々の仕事のアウトプットの質が高まっていく。



■文字化したものを共有する

同時に、文書化された内容が全社へ「共有」されることにも意図がある。


(省略)役割間の情報のギャップがなくなる上、別の人が既存の議論を繰り返すことがなくなります。

TERASS「Culture - Be Transparent」より


組織における情報全てがいつでも誰でも目に見える状態であることで、個の業務の最適化がなされる。


個人が役割や動きを判断する際に、常に会社の総和から自らの行動の最適解を導き出せる情報が揃う環境になる。文書の共通化により個の役割は最適化され、組織運営における効率化が進んでいく。



■定期的に振り返る

最後に、全ての前提として在るべき意識について語る。


「そもそも大前提、目的のないMTGはしないようにしますし、定例MTGといったものでも期に一度は見直して大胆に減らしたり、目的を再設定するようにしています」


当初意図をもって設計された会議だとしても、常に現状を疑いつづける。それこそが、変化する社会のなかで価値を創出しつづける組織であるために重要なのだろう。



 POINT 
・ コミュニケーションは全て文章に残す
 ―「誰が、何を、どれぐらいのものを、いつまでに」を明確にする
・ 文書化された情報を共有する
・ 会議は定期的に見直す





02【ツール】TERASSに議事録は存在しない。ストック情報は「Notion」に

Notion – The all-in-one workspace for your notes, tasks, wikis, and databases.


「最初はGoogleドキュメントを使っていたんです。これでも議事録は作れるんですが、TODOリストは別で管理しなきゃいけない。ページとページの繋がりがよくなくて、色んな書類がバラバラになってしまったんですよね。その点『Notion』は考えをまとめたり、発信するのに非常に適したツールだと思います」


ツールの導入により仕事の仕方も変わったと江口は語る。


「個々人のちょっとしたMTGやコミュニケーションも全部『Notion』上にアジェンダを用意して、お互い共同編集しながら全部を記録に残します。だから議事録は存在しなくて。お互いがどう考えて、どういう結論になったかを全部ここで見られるようにしておきます。『Notion』だと会議に紐づけて個々人のTODOも呼び出して連携させることができるので、タスクや期日もお互い公開された状態で、その場でアサインすることができるんです」


会議終了後、アクションの明確化と共有をシームレスに実現するのが「Notion」だ。会議の結論と各タスクを連携させることができ、そのタスクが誰のもので、いつまでに成されることになったのか、どのプロジェクトに属するかなど、全ての情報を一元管理できる。


さらに、組織内部のみでなく外部との連携にも利用される。たとえば、外部から入ってきた新しいメンバーがジョインした際の導入や、社外のパートナーに必要な情報を共有したいときなどにも活用されているという。


情報を整理し、発信し、蓄積する。全てに適している「Notion」によって、Superb Teamは支えられているといえそうだ。



 POINT 
・ 「何に」コミュニケーションを文書に残すかが重要
・ 「どのように」文書が運用されるかを見直す(会議間・仕事の連携がなされている議事録の運用方法であるか)



実際にTERASSで運用されているNotion画面




03【雰囲気づくりの工夫】「雑談」を仕組み化する


意図され仕組み化された組織のコミュニケーションは、全社、各プロジェクトから各人の行動へと連携がなされていく。一方、人と人のかかわりの中にあるのは、それら「意図」あるコミュニケーションだけではない。


各々離れた場所で働くリモート組織にとっては、特に雑談をはじめとするフローの情報のやり取りも大切なものだ。TERASSでは、雑談を仕組みとして取り入れている。



「MTGの最初の10分は雑談で始めるルールにしています。これはMicrosoftもやってることなんですけど。全社のMTGもそうですし、個々との週次の1on1でも、最初の10分は意図的にパーソナルを掘り下げて、『週末何した?』とか話していますね」


何気ない会話から始まることで、気持ちが和らいだ状態で会議が始まる。それにより、会議でのコミュニケーションは活性化されていく。


何気ない日常の出来事を共有し合うことはまた、相手を知るための情報が交わされることでもある。仕事と切り離されたところから生まれる、仲間の思考や行動を知ることで、人間関係が築かれてくのだろう。


また、そのスタンスにも江口は言及する。


「昨日財布なくした話とか、これリアルなんですけど(笑)。自己開示がすごく大事で、積極的にします」


TERASSでは雑談専用の「雑談チャンネル」がコミュニケーションツールSlack上にある。そこでは今日あったこと、週末の出来事などパーソナルな話題が自己開示の精神のもと積極的に交わされている。


誰かの良い共有に関しては、積極的にコメントしたり反応していくことも効果的だという。同社で作成されている、オリジナルの褒める系Slackスタンプが豊富にあることも雑談の潤滑油となっている。


永続企業の第一の条件:チーム全体の信頼を高める

雑談しにくい職場に創造性は生まれない

―リッチ・カールガード『グレートカンパニー 優れた経営者が数字よりも大切にしている5つの条件』(ダイヤモンド社、2015年)より


ささいに見えるコミュニケーションも意志を持ってなされることで、組織の力はつよくなる。フローの情報に関しても、組織の状況とリモートなど環境に合わせた工夫を考えてみることが大切であるようだ。


「コスト意識は結構あります。このアウトプットを期待するのに、誰がどのくらい労力かかるのかとか、従業員自ら工数計算して、これってペイするのかなと考えています。その価値があるかどうかの議論もせずに、とりあえず気合いで深夜やっておきますみたいなことをしない。アウトプットドリブンであることが大事なんです。何時から何時までPCの電源をつけていたかなどは、仕事の成果をはかる上では本質的ではありません」


組織と個人の合理性を追求する同社では、仕事にかかる工数とその効果を各人が客観的な視点で考える。アウトプットドリブンであるという組織の前提が、個人の自律的な思考を促しオーナーシップを生み出している。



 POINT 
・ MTGは雑談で始める
・ 雑談だけの場をつくってみる(Slack上に雑談チャンネルつくる等)
・ 自ら自己開示をしよう



2020.05.29

文・Focus On編集部




江口 亮介

株式会社TERASS 代表取締役CEO

東京都出身。慶応義塾大学経済学部卒業。2012年に株式会社リクルートに新卒入社(現リクルート住まいカンパニー)し、SUUMOの広告企画営業として、約100社以上の不動産ディベロッパーを担当。その後、売買領域のMP(Media producer)として、SUUMOの商品戦略策定・営業推進・新商品開発などに関わる。2017年にマッキンゼーアンドカンパニーに入社し、戦略・マーケティングを中心とした経営コンサルティングを手がけた後、2019年4月に株式会社TERASSを創業。個人で3回の不動産購入、2回のフルリノベーション、2回の不動産売却を経験。

https://about.terass.com/




>>次回予告(2020年6月5日公開)

後編 | マッキンゼーで学んだ「花火を上げる」称賛文化

組織における全ての情報が、意図を持ち仕組み化されることにより、効率的な組織がつくられる。後編では、さらにパフォーマンスを高めるため大切にすべき風土や文化醸成について聞いた。