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私のきっかけ ―『サラとソロモン』著:エスター&ジェリー・ヒックス

社会に思いをもって行動するイノベーターたちは、その半生の中でどのような作品(書籍・音楽・映像など)と出会い、心動かされてきたのでしょうか。本シリーズでは、社会に向かって生きる方々にお話を伺い、それぞれの人生の“きっかけ”となった作品をご紹介していきます。


▼作品をご紹介いただいたイノベーター▼

株式会社インプレスホールディングス 北川雅洋

顧問

幼少期から音楽やアート、デザイン、写真、メディア、グローバルなものの見方などに強い関心を持ち、青年時代はミュージシャンとして活躍した過去をもつ。創業期のソフトバンクに入社後、孫正義氏の側近として活躍。その後、米国ソフトウェア会社のVP及び日本子会社社長(本国の本社はNASDAQ上場)やイスラエル企業のEVP兼日本上陸時責任者などを務めた。現在までに、オープンインターフェース社副社長、パシフィックシステムソフト社社長、ブークドットコム社社長、イングリッシュタウン社CEO、エスプリライン社COOなど要職を歴任。現在はインプレスホールディングス顧問兼、株式会社ICE取締役相談役を務める。

https://www.impressholdings.com/



     人生のきっかけ    
 『サラとソロモン』 エスター&ジェリー・ヒックス

 こんな人に読んでほしい 
 あらゆる人に

 こんな風に読んでほしい 
 自分の中にある常識を外して。そうすれば誰でも感じる部分があるはず

「普通の感覚で読むと、納得できないところはあると思います」と語りながら本書を薦める北川氏。大人から子供まで、どんな年代の人でも読める短い物語でありながら、扱うテーマは社会の根深い問題に迫るものであるようだ。
現在、東証一部上場のインプレスホールディングスにて顧問を務める同氏は、学生時代は音楽活動に明け暮れたのち、創業期のソフトバンクに入社。孫正義氏の右腕として働いていた。本書に込められたメッセージは、北川氏がこれまで音楽・ビジネス・人生を経て信じる価値観と一致するものだったという。



作品の紹介

―きっかけとなった作品はありますか?―

ややスピリチュアルですけど、『サラとソロモン』っていう本は面白いですよ。


どんなお話かというと、サラは女の子で、ソロモンはフクロウなんですね。女の子は学校でお友達との関係がなかなかうまくいかなかったり、いじめられてたりしていて、癒しの場所が森で見つけたフクロウのいる場所なんです。


でも、いつしかフクロウがいることが、その女の子をいじめてる男の子たちに知られるようになってしまった。見物に来られたり、いじめがエスカレーションして、最後はフクロウが殺されちゃうんですよ。


フクロウが息をぎりぎり引き取るかどうかになった時、女の子が「私、絶対あの子たちを許さない」と言うんです。でも、フクロウは「それはやめてくれ」と。「私の人生はこれまでだし、その思いは捨ててほしい。それだけがあなたへの願いだよ」みたいなことを言うんです。



人生の思考の変化

―その作品との出会いは?―


この本を手に取ったのは1、2年くらい前、誰かがネット上で紹介していたんです。読んでみて思ったのは、元々そう思っていたから余計にそうだよねということですね。


被害を受けたら自分もやり返していいんだみたいな、そこに対して無理やり正義を持ってくる考え方は、どの時代もずっとあったものです。でも、それが間違いなんだと、フクロウは体で表現して死んでいく。「あなたにとっての教材になれたんだから、私は幸せだ」と言って死んでいくんです。


世の中の歴史って、日本の古い時代もそうですけど、かたき討ちは良かったんですよね。殺人ですけど。親がやられたら子どもはやり返していいと。でも、やり返して殺した人にも子どはいますよね、その人は自分を殺していいことになる。それがずっと続いてきている。


節理的に言うと、それは終わらないんです。だから、何の問題も解決しない。この本では森のフクロウと子どもたちの話ですけど、本当は社会全体の話なんですね。



作品が影響を与えた行動

―その作品から何を得ましたか?―


被害意識だとか恐怖みたいなもの、少なくともそういったものを薄めるだけでもだいぶ生きやすくなると思いますね。


仮に何か被害意識があるとして、それって意外と忘れないですよね。「あのときこんなことやられた」とか、それって相手はもう覚えてないけど、自分の中ではときどき思い返されること自体、自分に対して足かせをつけているようなもので。これは百害あって一利ない。


自分だって、意外と誰かに被害意識を持たれていることはあるんですよ。そんなつもりはなくても、「恥かかされた」と思うことも自由といえば自由じゃないですか。


バーチャルで実体がないものだからこそ根強いんです。でも、バーチャルで根強いものを捨てるとだいぶ楽になる。事業においても、全てにおいてそうですね。




▼北川雅洋の生き方がここに
『デジタルファースト出版がつくる文化―「1+1=2」を「1+1=3」にする』

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