Focus On 山元浩平

私のきっかけ

社会に思いをもって行動するイノベーターたちは、その半生の中でどのような作品(書籍・音楽・映像など)と出会い、心動かされてきたのでしょうか。本シリーズでは、Focus Onにて取材させていただき、ストーリーとして掲載させていただいている方々にお話を伺い、それぞれの人生のきっかけとなった作品をご紹介していきます。


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株式会社コーピー 山元浩平

代表取締役CEO

1987年生まれ。京都府出身。慶應義塾大学理工学部電子工学科を卒業後、シリコンバレーのスタートアップ、ウェディングプランナーなどを経て、東京大学大学院情報理工学系研究科に入学。その後、共同研究としてYahoo! JAPAN研究所、フランスの研究機関Inriaなどで人工知能に関する研究を行い、2017年、人工知能の研究開発を行う株式会社コーピー(英語表記:Corpy&Co., Inc.)を創業した。

https://corpy.co.jp/





―きっかけとなった作品はありますか?


影響を受けた作品でいうと難しいですね。本とか映画は正直あんまり影響を受けてなくて……。僕が影響を受けた人でいうと、将棋棋士の羽生善治さんと、宇宙飛行士の若田光一さん、MIT教授の石井裕さんは大きいかなと思いますね。彼らからは、自分の人生に対する使命とか、そういうプロフェッショナルリズムみたいなところをすごく学びました。なかでも羽生さんの名言集はたくさん持っていて、憧れではありますよね。僕が唯一ファンみたいに憧れている人っていうのは羽生さんかな。


―その作品との出会いは?またその出会いによって、どんなきっかけが生まれましたか?


僕、結構小さいころから将棋が好きなんですよ。ただどちらかというと、特に羽生さんを好きになったのは大学時代とか、大人になってからですね。


とにかく羽生さんが好きなのは、まず羽生さん自体が天才、そして自分の仕事とかやるべきことに対して圧倒的なまでにプロフェッショナル。彼はそのレベルが半端じゃない。


2017年に羽生さんは「竜王」のタイトルを取って、史上初の永世七冠(永世竜王、十九世名人、永世王位、名誉王座、永世棋王、永世王将、永世棋聖)になったんですよ。七大タイトル全部、永世称号って五連覇したり七連覇したりしないと取れないんですけど。


それを彼は15歳ぐらいからプロでやっているから、いま47歳で、32年間かけてずっとトップでやってきた人生。しかもそれを普通にやっているっていう、それがすごいんですよね。


将棋の世界って、研究してたときちょっと似てるなって思って、孤独なんですよね。一人でずっとパソコンと向き合って、チョコレート食べながらずっとやってたんですけど、答えないじゃないですか。研究って新しいものを作らなくちゃいけないので、苦しいんですよね。でも、苦しいんだけども、その自分だけしかない世界っていうものにひたすら潜っていく、そういうところの面白さもあって。


羽生さんってたぶんそういうことを、ひたすら誰よりもやり続けてきた人。それであそこまでの領域に到達した人だから、相当すごいと思っているんですよ。本当にプロフェッショナルですよね。


―その作品から何を得ましたか?


将棋もそうですし、人工知能についても羽生さんはめちゃくちゃ詳しいんですけど、将棋というものを通して、日本人、特に未来を担う若者たちに何らかの良い影響を与えよう、そういう強い意志を感じますね。ただ単に将棋が強いだけではなくて、最高峰のプロ棋士として、積極的に将棋という文化を広めたり、海外の方や人工知能技術者等さまざまな方々と交流したり、本当に使命感を持って生きているんだなということが行動や言葉の節々から感じられます。羽生さんはそれをあまりことさらに主張しないですけど。


たとえば、羽生さんが竜王を取ったあとに出演された報道ステーションで、「娘からの手紙」というメッセージがあったんです。「家では仕事の話は一切せず一言もマイナスな言葉を言わない父です。『言葉は人をつくる』だからこそ口に出す言葉はよく考えて大切に。の信条を体現する父。一つの仕事を頑張り続けている父をとても尊敬しています」という内容で、それを見て僕は2時間半ぐらい泣きましたね。娘からこんな尊敬されるお父さんいる?って思いました(笑)。


将棋って、人工知能にトッププロが負けて、強さという意味ではある種駆逐されたところがあるんですけど、羽生さんはそんなことは最初からわかっていたことだと。将棋っていうのは単純に勝ち負けを決めるゲームではないので、勝ち負けを決めるだけだったらじゃんけんでいいと、羽生さんは言っているんですよね。


将棋をやる理由っていうのは、そのなかで見せられる世界っていうものがあって、自分にしか出せないそういう世界を表現して、観客を楽しませるとか喜ばせるってことに価値があると。


彼が見てる世界っていうのはすごくうらやましくもあって、やっぱり彼の生き様は自分の中にすごくいろいろ影響を与えていると思いますね。


ありがとうございました。


▼山元浩平の生き方がここに
『すべての人生に限界はない ― 人類とAIの理想的な関係のために』