目次

私のきっかけ ― VR「Oculus Rift」

社会に思いをもって行動するイノベーターたちは、その半生の中でどのような作品(書籍・音楽・映像など)と出会い、心動かされてきたのでしょうか。本シリーズでは、社会に向かって生きる方々にお話を伺い、それぞれの人生の“きっかけ”となった作品をご紹介していきます。


▼作品をご紹介いただいたイノベーター▼

株式会社EmbodyMe 吉田一星

代表取締役CEO

1983年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学卒業後、ヤフー株式会社に入社。コンピュータビジョン、機械学習、検索、分散処理などの研究開発に関わり、コンピュータビジョン、VR/ARの技術を世界に先駆けてスマートフォンに応用したサービスを複数立ち上げた。2016年に株式会社EmbodyMeを創業。受賞歴に経済産業省のInnovative Technologies採択、未踏ソフトウェア創造事業採択、グッドデザイン賞受賞、Hack Dayで過去3回優勝など。

https://embodyme.com/



     人生のきっかけ    
 VR(バーチャル・リアリティー)という技術:「Oculus Rift」など

 こんな人に体験してほしい 
 芸術系の人、感覚的な部分を重視する人

 こんな風に体験してほしい 
 体験しないと伝わらない部分を体験してほしい

近未来を描いたSF作品を彷彿とさせる仮想現実に、たしかに自分が存在する感覚がする。2012年、クラウドファンディングサイト「Kickstarter」に出品されるや否や、約240万ドルを調達し、現代のVR体験を一躍世界に知らしめた「Oculus Rift」。新時代の幕開けともいえる技術トレンドの生みの親、開発したのは当時19歳の少年だった。
ガジェット好き吉田氏の宿命として、いち早く試さずにはいられなかった。吉田氏が「Oculus Rift」を手に取ったのは、必然だったのかもしれない。VRは人間の脳の錯覚を利用して、仮想世界を現実世界と認識させる。視覚にダイレクトに情報を伝えるその体験がもたらしたものは、吉田氏にとって、夢を託したくなる技術との出会いだった。




作品の紹介

―きっかけとなった作品はありますか?―


特定の作品というわけじゃないんですけど、新しいデバイスが出てくるたびにやっぱり何かしらの影響はすごく受けていて。その影響で、仕事もそうですし趣味もそうですしやっている印象ですね。


最初はピピンアットマークからインターネットで、パソコンもそうですし、スマートフォンも、あれは割と衝撃でしたね。最近でいうとVRですね。残念ながらまだVRってそこまで流行ってはいないですけど、個人的に受けた影響は結構大きいかなと思います。



人生の思考の変化

―その作品との出会いは?―


初めて体験したのは、2013年くらいだった気がするんですけど、「Oculus Rift」のデベロッパー版が出たときに買ったんですよね。たしかライゾマティクスの真鍋大度さんが買ってツイートをしていたのを見て。ガジェットが好きだったので興味を持った気がします。


プレイしたのは、当時の「Oculus Rift」についてきたソフトですかね。移動するだけみたいなソフトではあるんですけど。初めて体験したときには完全に酔いまして。VRはパソコンのパワーが追い付いてないと、すごく酔いに繋がるんですよね。当時まだVRもそこまで一般的ではなかったですし、しかもすごくスペックの足りないMacでやったので、バリバリに酔った印象がありますね(笑)。


ただ視覚全部を乗っ取るという体験は、すごくいろんな可能性を感じました。衝撃を受けましたね。


視覚って当たり前にあり過ぎるので、今まで文字を読んだり、映画を見たり、アートを楽しんだり、何かしら情報を受け取っていても、そこまでダイレクトな感じはしていなくて。それがVRだと全てダイレクトに伝わるっていうところで、視覚も一つの感覚なんだなっていう感じをすごく受けて。


だからこそ、VRのほかにも音楽とか温泉とか、感覚で楽しむものが自分は好きなんだろうなと逆に気づかされたことが大きかったですね。




作品が影響を与えた行動

―その作品から何を得ましたか?―


起業した時も、最初はVRに特化したプロダクトを出していました。オンラインでその人そっくりのアバターになりきって、他人とコミュニケーションが取れるものだったんですけど、VRデバイスを被るコストであるとか、まだまだ難しいと思いました。なかなかVRの普及には時間がかかるなという印象ではありますね。


技術やサービスって全員が全員に普及しないと、できないことっていっぱいあるなと思っていて。逆に、全員に普及するとできる幅がものすごく広がると思うんです。


たとえば、あらゆるコンピュータでやっていることが代替できるのではと思いますね。最初に置き換わるかなと思うのは、会議とかですね。遠隔で仕事ができるとか。ずっとVRデバイスを被りっぱなしみたいな世界観になってくると、気軽に会議ができるし、狭いPCじゃなくてVRデバイスを被ったままで仕事も全部できて、ほかの人とのコミュニケーションも取れるみたいになってくると、出社の必要がなくなってくる。


どこの世界にいても、同じ空間上でコミュニケーションを取りつつ仕事ができるので、場所の制約がなくなるっていうところですよね。発展途上国にいる人も、先進国の人も同等に扱われたりしますね。そこが一番ありそうな感じがします。




▼吉田一星の生き方がここに
『未踏起業家の語る「AI×CGと身体」―未来はバーチャルな身体が鍵になる』



X  CLOSE
SHARE