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地域の共助は「ほっとかへん」を合言葉に(後編) / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略

日本人なら誰もが知る健康飲料「ヤクルト」は、一人の医学博士の「予防医学」という願いから始まった。異国情緒と多様性を内包する街・神戸で生まれた兵庫ヤクルト販売は、今年で創立70周年。人々の健康を願い、地域社会に貢献する。そのDNAは今も変わらず受け継がれ、同時に「健康の定義」の変化とともに時代に合わせた進化を遂げつつある。


ニューヨーク留学、ヤクルト本社への出向、慶應MBAを経て神戸に戻った3代目代表取締役社長 阿部恭大が、兵庫ヤクルト販売の原点と未来、地域の健康を支える新たな共助モデルについて語る。(聞き手:GOZEN代表 布田尚大)



経営者の高齢化に伴い、「大廃業時代」とも言われる昨今。日本全国の中小企業の事業承継は大きな社会課題となっています。そんななか、ビジョンと野心をもって家業を引き継ぎ、現状維持ではなく成長させていこうとする後継者の活躍も目立ちつつあります。

シリーズ「地域企業の承継者たちとM&A戦略 ―継ぐ、拡げる、編み直す―」では、地域への貢献性、社会への公益性の視点も持ちながら、M&Aという資本主義的な手段を使っての事業成長を考える承継者たちの経営論や考え方、M&Aの新たな可能性を紐解いていきます。




▼前編

兵庫ヤクルト3代目が継いだ創業の願い / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略

▼中編

事業提携がつくる「届ける人」の社会インフラ / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略

後編(本記事)

地域の共助は「ほっとかへん」を合言葉に / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略



社会課題は可能性の芽である


布田:日本全体で人口が減っていくなか、事業についてどんなスタンスで捉えていますか?


阿部:人口が減るのは仕方ないかなと思っています。それはもう受け止めるしかないと。ただ、フェリシモ社長の言葉をお借りするなら「社会課題は可能性の芽である」と、その中でも私たちヤクルトとしてチャンスがあるかもしれないと探っている途中です。


私たちの地域にも超限界集落があり、スーパーがなくなって社会インフラが機能しなくなりそうなところがあります。でも、買い物難民が増えるなら、私たちの「届ける力」と商品で移動型スーパーを走らせたり、物流や配送、商流をトランスフォームして新しい事業を作ることができるかもしれません。


同時に予防や未病の考え方、「健康」の定義や解釈は日々進化して広がっています。既存事業だけが必ずしも手段ではないということを、最近感じる機会が多いです。新規事業やM&Aという選択肢も活かしつつ、人々の健康に寄与する別の表現方法や事業は絶対にある。人口が減るなかで新しい社会課題が出てきたときに、予防や未病、医療、福祉、介護といった領域で、私たちが幅広くお役に立てる事業が今後あるだろうと考えています。



「ほっとかへん。」創立70年目に変えたビジョンの意味



布田:これから3年、5年、10年など中長期で成し遂げたいことを教えてください。


阿部:大きく二つあります。一つは、2026年2月27日に弊社は70周年を迎えています。今期はビジョン・ミッション・バリューを変えて、ビジョンを「ほっとかへん。」、ミッションを「予防、希望に。」と新しくしました。ここが80周年、そして100周年へ向けた転換点だと思っています。


「ほっとかへん。」について説明しますと、取り残さない社会や、孤独・孤立を予防すること、地域の社会課題も「ほっとかへん」という想いを込めました。全員がおせっかいで関わり合って、そういう人や地域、社会になったらいいよねと。人とのつながりが薄くなっていくなかで、お互いの顔が見えて共助が働くような社会づくりに少しでも貢献したい。医療、福祉・介護など、いろいろな業界でそれができたらいいかなと思っています。


二つ目に定量的な部分で言うと、売上を100億に。今は55億なので大きな目標ですが、本当は300億くらい目指さないといけないとも思っていますし、まずは今の一つの目標です。



まずは地域、そして世界も視野に



布田:兵庫という地域を超えて広げていく構想はありますか?


阿部:これから5年・10年先に関しては、第一にこの地域をと考えています。基本的に兵庫ヤクルトという会社の基盤はヤクルトレディであり、その先の顧客とのつながりや信頼関係です。そこをベースにしていかなければいけないですし、さらに基盤を強固にして成長させていく、革新させていくということが一番かなとは思っています。


今ある地域のつながりやネットワーク、強みを活かせるのは、やはり自分たちの移動範囲内という物理的な制約もあります。ただ、地域を豊かにした先として、関西、九州、関東へと広がる選択肢は延長線上にあると思っています。


10年・20年という長期のスパンで見ると、日本は課題先進国ですから、タイ、韓国、台湾など日本の背中を追っている国々があるなかで、兵庫ヤクルトで作った地域モデルが輸出できる、海外で戦えるチャンスがあるなら出ていくこともあるかなと考えています。


 POINT 
・ 社会課題が生まれるほど、可能性は広がる
・ 地域に根差した先進的な事業モデルの構築にはチャンスがある



2026.5.21

取材・布田尚大/M&Aナレッジカンパニー GOZEN

文・Focus On編集部




▼前編

兵庫ヤクルト3代目が継いだ創業の願い / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略

▼中編

事業提携がつくる「届ける人」の社会インフラ / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略

後編(本記事)

地域の共助は「ほっとかへん」を合言葉に / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略



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