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or経営者はM&A前後で何を目にし、何を思い、そして選ぶのか。「M&Aの再編集」は、自ら事業経営/M&A/PMIを経験するM&AナレッジカンパニーGOZEN代表・布田尚大氏による連載コラムです。売却額でも実務ノウハウでもない、新たな視点からM&Aのリアルを語り直し、その先のビジネスや人生を考えるヒントをお届けします。(毎月、第一月曜日に新着公開)
M&A仲介業界は、極彩色な業界だ。一つには、平均年収が非常に高いことで知られる。
中小企業庁によるM&A登録支援機関のデータベースを閲覧してみると、最低手数料を売り手/買い手それぞれで2000万円程度に設定している仲介会社もある。このような大きな取引を少人数の精鋭スタッフでアレンジするため、高額な年収が実現可能になっているのだろう。
もう一つは、残念ながらお行儀があまりよくないことでも知られる。M&A後トラブルに発展した、こちらで描かれているような係争事件は論を待たず、売却候補、買収候補を探す一部の強引なマーケティング活動に、中小企業庁からガイドラインが出され、浄化が進められている。
M&A仲介業を営む各社のガバナンスが求められることは当然だが、単価が非常に高く基本的に一回しか販売できない「企業という商材」の商取引で、M&Aという仲介業者と売り手・買い手の情報の非対称性が大きい領域で、マッチングさせたらフィーをもらえるというリボン図ビジネスは、いかに売り手/買い手の情報を集めてくるか、というマーケティングに競争優位性が収斂しやすい構造にある。
GOZENはそのような硬直しやすいM&Aビジネスのサービスデザイン自体を変えていけたらと思っている。事業承継という中小企業の経営にまつわる社会課題に、M&Aという選択肢をリアリティを持って示し、普及させたことにM&A仲介の社会的意義の一つがある。
そんな社会的意義ドリブンの視点に立つ時、先人が切り開いてくれたマーケットから少しでもお金を自社に引き込む換金活動ではなく、新しいサービスデザインを開発し、別種の社会的意義を付加したい。そんな思いでGOZENとして取り組んでいる事例を1つ紹介する。
先月から、カルチャーメディアのCINRAと提携し、事業承継を考えているビジネスオーナーにインタビューし、その経営哲学やパーパスに共感できるバイサイドを募る取り組み Exit Stoiresを始めた。
インタビューをしたのは、表参道・原宿のローカルメディアOMOHARAREAL(オモハラリアル)。セグメント化された濃いユーザーだけで年間200万PVを実現する、可能性に満ちたメディア。
今までのM&Aは、事業規模が一定以上で多くの従業員を抱える企業を対象としたものが多く、M&Aを検討していることの情報公開は、ガバナンスの観点で難しかった。しかし昨今は社長とスタッフ数人といった小規模企業のM&Aも増え、M&Aについて社内合意が取れているケースも多い。そのような場合には、社名を開示して広くM&A先を募ることは、よりフィットするディールの創出につながりうる。
さらに、ただ社名を開示するだけではなく、プロの編集者によるコンテンツ制作にも可能性を感じている。従来のM&Aの買い手探しは重要な経営数値を社名非開示で伝えるところから始まるため、事業への想いや熱量・数値化しづらい無形資産をファーストステップで全面に伝えるのは難しい。経営成績からではなく、事業への想いから始めるM&Aの可能性を追求したい。
M&A関連ビジネスの営業利益率は総じて非常に高い。その中で今回の取り組みが高い営業利益率を叩き出せるプロジェクトかといえば、答えはNOだ。でも、なんの問題もない。それでも事業をサステナブルに成長できる営業利益は確保しうる。
何よりM&Aにまつわる新しい流通構造を創出し、さらにそれをこのようなコンテンツの形で、なぜやっているのか、どのような経済圏を創り出したいのかも発信していく。そんなプロジェクト単位のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を併せて伝えていくことで、経済観点だけではない、社会的、文化的な付加価値を加算できるのではないかと企んでいる。
最近、GOZENのミッションを再定義した。”世界に通用する上質な資本主義をつくる”。自分が40代となり、人生後半をまるっとかけて取り組める大きな旗を意識した。この壮大なミッションは、GOZENだけでは到底実現できない。想いが重なり合う、連帯できるパートナーが鍵になる。本寄稿の掲載メディアFocus Onのコンセプトは”社会への「思い」に光を当て、「生きる」を後押しする”で、CINRAのミッションは”人に変化を、世界に想像力を。”だ。GOZEN発のプロジェクトで、世界に、社会に、人の人生に、差分を残していきたい。
2026.5.11
文・布田尚大/M&Aナレッジカンパニー GOZEN
▼連載|M&Aの再編集(毎月、第一月曜日に新着公開)
#1 M&Aの不都合な真実、ピカソの絵、バリュエーション(事業価値評価)
#3 M&Aビジネスのサービスデザインを開拓する
布田尚大
M&AナレッジカンパニーGOZEN代表。2022年、3年間経営したボディポジティブなランジェリーブランドfeastをM&A。4年間取締役社長としてPMIに従事し、事業成長を実現。GOZENを立ち上げ、老舗百貨店高島屋、Forbes Japanでアワード受賞企業、M&A時24歳の若手起業家の事業など、幅広いM&Aの成約をサポート。ハフポスト日本版、M&A Onlineなど、取材・執筆実績多数。
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