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私のきっかけ ―『嫌われる勇気』著:岸見一郎/古賀史健

社会に思いをもって行動するイノベーターたちは、その半生の中でどのような作品(書籍・音楽・映像など)と出会い、心動かされてきたのでしょうか。本シリーズでは、社会に向かって生きる方々にお話を伺い、それぞれの人生の“きっかけ”となった作品をご紹介していきます。


▼作品をご紹介いただいたイノベーター▼

株式会社美歴 鈴木一輝

代表取締役社長

1979年生まれ。埼玉県出身。東京農工大学卒業後、株式会社アルバイトタイムスなどで営業、Web企画、マーケティングに従事したのち株式会社パイプドビッツへ入社。執行役員マーケティング室長として、グループ内で複数の新規事業立ち上げに参画。2011年にスタートした美容電子カルテアプリ「美歴」にて、2016年3月、パイプドHD株式会社100%子会社として法人化。株式会社美歴の代表取締役社長に就任した。

https://bireki.jp/



     人生のきっかけ    
 『嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え』 岸見一郎/古賀史健 著

 こんな人に読んでほしい 
 社内起業する人、組織の人間関係に悩む人

 こんな風に読んでほしい 
 自分なりのこれまでの人間関係のロジックのようなものを整理しながら

「社内起業って、人間関係が煩わしかったりするんですよ」――。そう語るのは、東証一部上場のパイプドHD傘下にて、株式会社美歴の代表取締役を務める鈴木氏だ。同グループ内にて、複数事業の立ち上げに参画したのち、美歴をスピンアウトする形で社内起業家となっている。
自ら旗を立て、一から仲間を集める独立起業と違い、既存の関係性が存在する社内を巻き込みながら事業を推進しなければならない。その過程では、さまざまな軋轢と向き合うことになるそうだ。本書は社内起業家にかかわらず、組織の人間関係に悩む人すべてにとって、不要な悩みを消し去りブレイクスルーをもたらしてくれる本ではないかと、鈴木氏は語る。



作品の紹介

―きっかけとなった作品はありますか?―

『嫌われる勇気』ですね。人との関係性をどう作るのかについての本なんですが。


僕は自分を実行力も技術もない人間だと思ってるんです。だから、何かを成そうと思ったときに、何が必要かというと、人の協力を得ないといけない、いろんな支援者が必要で。僕自身はこうやりたいという思いだけは強いタイプなんですけど、一時期いろんなしがらみや衝突にすごく悩まされたんですね。


もっと言うと、めちゃくちゃいい人になろうとしていた時期があったんです。誰に対しても、いい人に。



人生の思考の変化

―その作品との出会いは?―


社会人になって初めて部下を持った時に僕はいい人になれば、部下はついてくると思ったんです。そしたら意外とうまくいかなくて。「何とかしてくれ」って余計僕に言うようになったり、物事が進まなかったり、みんな僕のせいにするだけでチームにならなかった。


当時の僕は、嫌われたくないから何でもイエスと言っていました。結局今のイエス『前編 | イントレプレナーの成長法則リンク』より)と、当時のイエスって全然違って。当人同士の問題を直接解決させずに、裏で自分が調整して解決した様にみせたり、本質的でないことしていました。なんでこんなことしてるんだろうなって、すごい悩んでいて。そんなときに本屋に行ったら、『嫌われる勇気』ってあったので、なんだこれと(笑)。


既に長く売れている本だったので、一応知ってはいたんですが、なんとなく読んだら負けな気がしていて(笑)。でも、やっぱりうまくいかなかったので手に取って。


読んでみると、強烈でしたね。


自分なりの理解ですが、本書は他者から嫌われない生き方は不自由、他者から嫌われることが自由に生きることに紐づくという考え方から語られ、他者と向き合わないのは人生のタスクと向き合っていない、「人生の嘘」だと説明が続きます。結局、僕がやっていたことは何かというとまさに「人生の嘘」だったんです。ショックじゃないですか(笑)。自分は人生の嘘をついていて、人生のタスクと向き合っていないんだと。


最初は受け入れられられず、イライラしながら読んでいた記憶があります。でも、だんだんと具体的な例示などで理解が進んでいくうちにていくうちに納得感が出てきたんです。当てはまるなと。僕が何でもイエスと言っていた根源は、単純に自分がいい人でありたいだけ、いい人だと認められたいという承認欲求にあるんだなと。みんなに好かれるためのイエス、自分のためでしかないイエス。そこからまず離れないといけないと気付かされました。半分くらい読み進めたときには、反省しつつ、半ば情けない気持ちになっていましたね。




作品が影響を与えた行動

―その作品から何を得ましたか?―


僕が理想とするのは、チームみんなで共通の目標、価値観を持ったうえで、「イエス」やっていこうと、一緒にスクラムを組み進んでいくことだったのですが、当時の僕は話を聞く立場としてイエスと言ってあげている状態。何とかしてあげている人なので、上下の関係になっていた。要は、イエスでマウント取ってる感じだったんですよ。


でも、それは仲間だと思ってないからだと本には書かれていて。なるほどなと、僕が理想とするものじゃないなと思って、だったら上下の縦の関係を横にすることから始めようと思いました。


具体的には、とにかく向き合うしかなくて。それまでは関係性を壊したくなかったので、思ったことを言っていなかった。保身、偽善ですよね。いい顔しているだけだった。そうではなく、仲間なのでプラスになると思ったこととか、これはマズイかもと思うことに関しては、はっきり言うようになりましたね。


それまで僕は、同僚を自分の尊厳を担保に信用していました。自分がいい人であるための人間関係です。今では、僕にとっての仲間は100%信頼する対象です。そのために、自分のこともさらけ出して、向き合うようにしています。全然、違いますよね(笑)。


周囲は、まぁびっくりです(笑)。「何こいつ」って感じでしたね。ただそういう相手にも「仲間なんで」って言っていたかもしれない。仲間なので耳障り良くないことも言いますと。そこから、自分に都合がいいだけの人間関係は作らないようになりました。





 連載一覧 
前編 | イントレプレナーの成長法則
中編 | 社内起業家に送る ビジョンと思いの結び付け方
後編 | 美容室はどう変わっていくか?



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