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後編 | 中小企業経営にとっての市場変化 ― 持続可能な未来へどう対応するか?



日本経済の未来への一手は、「連携」にあるのかもしれない。

全国40以上の地域金融機関、27,000社以上の中小企業が参加する経営支援プラットフォームを運営し、中小企業を起点にした新しい経済の潮流を生み出す株式会社ココペリ。

かつて「グローカル」という言葉で、グローバルと地域の視点を掛け合わせた行動が示されたことも記憶に新しいが、「地域内と地域内、地域と地域を繋ぎ、日本を支える」のが同社である。

国内初の全国金融機関が連携するプラットフォーム「Big Advance」、特許取得済のAI融資エンジン「FAI」など、Fintechによる金融機関の新たなビジネスモデル構築やDX化の可能性を拓く。新規提携する金融機関はひと月に6行庫増加することもあるなど、今、全国的に最も急速な広がりを見せている経営プラットフォームといえる。

代表取締役の近藤繁は、地元愛知県で中小企業の輝きを目にし、大学卒業後みずほ銀行にて中小企業向け融資業務に従事。のち同社を起業した。

本連載では、地域企業の救い手として産官学から期待され、官公庁や金融機関にて多数の講演も行う近藤に、「サービスに投影される思い(前編)」、「変化時代の中小企業経営(後編)」について伺った。



 シリーズ「プロソーシャルな距離」について 
世界が今、こういった状況だからこそ、「知恵」を繋げたい。
私たちFocus Onは、社会のために生きる方々の人生を辿って物語と変え、世の中に発信して参りました。そんな私たちだからこそ、今届けられるものを届けたいと考えております。社会に向けて生きる方の知恵の発信により、不透明さを乗り越えるための「知」の繋がりをつくりたい。それがどこかの、どなたかにとっての次へのヒントになれば。そう考え、本シリーズを企画し、取材のご協力をいただいております。











近藤繁に学ぶ 中小企業としての変化への対応力


01【変化時代の経営】変化の時代をどう捉えるか

02【変化時代の経営】変化に対応するための経営基盤の育て方




01【変化時代の経営】変化の時代をどう捉えるか



COVID-19下にある今、対面に依存した営業スタイルが通用しなくなりつつあるように、既存の戦略や事業、組織運営が、いつ予期せぬ要因により阻まれるか分からない。そんな変化時代を、中小企業はいかに捉えるべきか。


近藤は、自らの事業も「中小企業」であるとし、それら中小企業にとって現状を見直す好機と捉えられるのではないかと語る。


「たとえば、飲食店とかも今まで普通に外で食べていたけど、こうやって自粛となったときに『あそこのランチ食べたいな』と思うところと、そうじゃないところに二極化すると思うんですよ。そういうとき出てくるところが、自分にとって本当に必要な店なんだと思えるように、みんな大事なことと、そうでもなかったものがそれぞれ見えてきたと思うんです」


変化は、慣れ親しんだ日常に新たな視点をもたらしてくれる。同時に、本当に大切にすべき価値を浮き彫りにしてくれる。それにより私たちは守り継承していくべきものと、改めていくべきものの線引きを見直すことができる。


大事だったものと、そうでないものは変化によって抽出される。消費者の生活がそうであるように、企業にとっても同じことが言える。


たとえば、商談の手法一つとっても、オンラインが十分可能であるという認識が広がった今、今度は直接対面する意味が自ずと問われるようになっているという。


「たとえば、アメリカって商談するとき基本最初は電話らしいんです。会わずに電話で話して、この会社と本気でやっていけそうだなとなったら初めて会うことにする。その方が合理的ですよね。日本はとりあえず会う文化がやっぱり根強くて。ほぼ喋らないにもかかわらず同行者が10人以上いたりしますけど、そういった無駄はなくしていいと思うんです」


金融機関とスタートアップ企業。近藤は、大企業と中小企業どちらの立場も経験してきた。両者の関係性においては、中小企業側が大企業の慣例に従わざるを得ないケースが多いと振り返る。


大企業に合わせていくことで慣習化していた営業手法も、中小企業にとって最適であるかどうかは分からない。


小回りが利く中小企業だからこそ、組織に変革を起こしやすい。社会全体として変化への気運高まる今こそ、無駄を減らし、生産性を高めるまたとない機会である。


これまで当たり前だった慣行の意義を振り返り、再整理する。当然、全てがオンラインに移行すれば良いというものでもないだろう。オフラインの価値もまた再定義されるべきである。いずれにせよその本質へ向き合う過程から、未来へと繋がる新たな発見がありそうだ。



 POINT 
・ 変化は、新しい視点をもたらす
・ 変化は、当たり前に疑問を持ち再整理する好機と捉える




02【変化時代の経営】変化に対応するための経営基盤の育て方


近藤自身は変化をどう捉え、いかに事業を作ってきたのだろうか。


「いわゆる経営って、ヒトモノカネ情報といわれますけど、根本的にはタイミングが大切だと僕は思っています。早すぎても、遅すぎてもダメで。ちょうどいいタイミングで、全力で闘える準備を整える。そうできているのが最高だと思うんですが、本当に難しい」


過去金融機関を経て起業し、中小企業の経営と間近に触れ続けてきた近藤は、実体験に基づき語る。



■社会の変化と事業―激しい変化の中で挑戦を続ける

「事業をぐっと伸ばすって、僕のイメージでは階段が三段跳びくらいであって。その階段の下が崖になっている。そこをジャンプして上がっていく感じなんだと思うんですよ。全てのタイミングとバランスと脚力とかが合わさって初めてびゅんと伸びるので、それが合わさるのって相当大変だと思っています」


①脚力:続けることで失敗を蓄積する ―


「僕自身何かを成し遂げたわけではないですが、本当に続けることが大事だなと思っていて。ただ待っているだけでもダメだし、何回も失敗しなきゃいけないし、跳びつづけないといけない」


いち早く挑戦し、失敗し、改善する。それを諦めず愚直に続けていく。会社員時代、融資先である中小企業経営者たちの眼差しの先にあったものも、そうだったのかもしれない。事実、ココペリを創業し、経営者となってからその思いは鮮明になった。


「そういった意味で、常に改善して続けることですね。なんで駄目だったんだろうと考えながら続けることが大事だと思います」


失敗を蓄積してくことで脚力が生まれる。闘うべきときに全力で戦える下地ができていく。



 ②タイミング:蓄積された脚力をもって市場にでる ―


ココペリを設立してから約13年。いくつものサービスをリリースしていく過程では、実際にタイミングが合わない経験も重ねてきたという。


「今でいうオンライン請求書みたいなサービスを開発しかけて途中で辞めたことがあるんですけど、まだあまり社会に習慣として根付いていなくて。今ようやく請求書をオンラインでと言われはじめていますが、あれも当時は早すぎたのだろうなと思えたり、いくつかあります」


世に出すのが早すぎた同社のサービスは、今では8士業の専門家と中小企業をマッチングする機能へと形を変え、27,000社以上の中小企業に利用されるプラットフォームの一翼を担っている。


早すぎても遅すぎても、社会には受け入れられない。さらに言えば、タイミングが合う瞬間というものは、自分だけに訪れるものではない。その時、市場には競合企業も存在するだろうし、大企業も参入してくるかもしれない。


中小企業経営者はそのなかで勝ち抜かなければならない。そのためには、お金や人材、経験といったリソースを確保しておき、来るべきタイミングにバランスをもって跳躍する準備が必要なのだ。



仮に経営者自身がやりたい事業、サービスを広められることが一つの成功だとすると、まずサービス・モノ自体が本当に良いものであることは大前提として必要になる。そこからは、事業にとってベストなタイミングが訪れた時、万全な状態で挑めるかどうかが、究極的に企業の行く末を左右すると近藤は考える。


不確定要素が散在するビジネス環境で、いざチャンスが訪れたときに跳躍する準備を整える。そのために、より多くの挑戦と失敗を重ね、少しでも軌道を修正していく。


挑戦の連続は、未来を生き抜く中小企業の経営基盤となっていくのだ。



 POINT 
・ 挑戦と失敗を続けることが経営の資産になる




2020.10.14

文・Focus On編集部




近藤 繁

株式会社ココペリ 代表取締役CEO

1978年生まれ。愛知県出身。慶應義塾大学理工学部情報工学科卒業。研究テーマはData mining。みずほ銀行に入社し、中小企業向け融資業務に従事。その後、株式会社ココペリを創業し、2015年に中小企業向け経営支援プラットフォーム「SHARES(シェアーズ)」をリリース。2016年にはAI(人工知能)を活用した与信モデル「SHARES FAI」を開発。数多くの金融機関と協業展開中。

https://www.kokopelli-inc.com/




>>前回(2020年10月7日公開)

前編 | 中小企業の誇りのために—ヒトモノカネ//第6番目の経営要素

日本の全企業の99.7%を占める中小企業。その「誇り」に生きる近藤の情熱はどこから来るものなのか。そして、「中小企業のため」を追求するサービス作りのこだわりとは。同社の核にある思いに迫る。






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