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社会と文化に資するM&Aマーケットを創出するために ― 連載開始に寄せて 

Focus On×ソーシャルM&A®︎ファームGOZEN共同企画「ソーシャルM&Aという人生戦略」では、社会課題解決を目指すソーシャルビジネスや、クリエイター発の美意識あふれるスモールビジネスの領域において、M&Aによって事業、そしてライフキャリアの可能性を拡張させてきたアントレプレナーたちの生き方や意思決定に迫ります。


「ソーシャルM&Aという人生戦略」


”美しさと正しさでメイクマネー”を掲げて


布田 尚大
ソーシャルM&A®️ファームGOZEN代表。スモールビジネス、ソーシャルビジネスの経営とM&Aが専門。2022年、3年間経営 したボディポジティブなランジェリーブランドfeastの事業グロースとバイアウトを実現。現在株式会社feastにて取締役社長としてPMIに従事。株式会社水中メンター/2018.2019年渋谷ファッション&アート専門学校 非常勤講師/日本マーケティング学会会員。一橋大学 社会学部/同大学院 社会学研究科修士課程修了。WSD28期ワークショップデザイナー。1983年東京生まれ。


株式会社drapology(ドレイポロジー)という会社で、GOZEN(ゴゼン)というM&Aの事業をやっている。掲げている会社のコンセプトは、美しさと正しさでメイクマネー。


弊社のwebサイトに掲げられたコンセプトをみて、カッコいいね、と言ってもらえることもある。でも、よくよく考えてみれば、ごく当たり前のことを言っているに過ぎない気もする。ダサくて悪いことでメイクマネーするのが生きがい!って人はあまりいなそうだ。それでもこのコピーが心のどこかに引っ掛かるのだとすれば、それは美しさと正しさでメイクマネーするのは簡単じゃない、と感じている人が一定数いるからだろう。


かくゆう自分もその1人である。社会人になって3年位でソーシャルビジネス、エシカル消費、地方創生といった言葉と出会い、その後1・2年でSDGsというビッグワードが出てきた。周りにそれらキーワードの周辺で活動する人も多かった。でも、社会人ももうすぐ15年になろうとする今、メイクマネーしたなあって思う人は正直あまりいない。


「好き」や「やりがい」を取るのか、それとも「安定」と「高収入」を取るのか。この二文法は未だに根強い。外部不経済の社会課題に果敢に挑む友人、透徹した美意識を感じるブランドを運営する仕事仲間もいるし、年収数千万のバンカーの旧友、億単位の資産を持つスタートアップ経営者の飲み仲間もいる。けれど、両方を体現している人は本当に少ない。


自分には「好きなことができているなら年収400万でもいい」も「年収1000万さえあれば満足いく生活が手に入る」も、両方虚しく思える。じゃあ、どうするのか。美しさと正しさとメイクマネーは、どうすれば実現できるのか。それを考えながらずっと仕事をしてきてたどり着いたのが、今のソーシャルM&A®︎ファーム、GOZENだ。1ディール、1ドネーションをコンセプトに、ディール成立時、アレンジメントフィーの一部をミッションが近しい非営利団体に寄付し、経済成長とソーシャルインパクトの両立にチャレンジしている。


ソーシャルM&Aの可能性


GOZENはソーシャルビジネス・スモールビジネスに特化したM&A仲介事業だ。M&A仲介は収益性も高く、法人営業の腕に自信がある人、士業、金融関連のキャリアの方など、多くのプレーヤーが参入しているが、自分はそのどれでもなく、自分自身がスモールビジネスの経営をし、M&Aし、PMIフェーズでCEOをやっている経験から、GOZENを作った。


それはfeastというバストが小さい方に特化したD2Cブランドを運営する会社で、売却先は国内最大級の下着のOEM会社。M&Aによって親会社のサプライチェーンを使うことができるようになり、アイテムのクオリティは上がり、プライスは下がった。親会社のオフィスにある共用スペースで、お客様に気軽に手にとってもらえる試着会も定期開催できるようになった。ビジネスによってソーシャルインパクトを与えようとする時に、M&Aによって事業のクオリティを一気に急激に上げていくのは、状況によっては極めて有効な一手になりうる。


直近でもう一つ、創業15ヶ月の京都の野菜ベンチャーOYAOYA(オヤオヤ)を、創業115年、グループ年商400億のグローバル刃物メーカー、貝印グループに売却するM&Aのアレンジを行った。規格外で廃棄される京野菜を乾燥野菜にして、ブランド化して販売するOYAOYAは、これから日本全国の小売事業者や1万人以上の料理家のネットワーク、海外との豊富なリレーションを持つ貝印社のアセットを使いながら、規格外野菜の流通拡大と、京野菜のグローバルブランド化に挑戦する。取締役CEOとして引き続き業務にあたるOYAOYAの創業者は20代半ば。一般的な就職活動、新卒入社をしていたら、この年次でこの規模の子会社の取締役への着任は難しいだろう。夢と志と才覚がある若者が、飛び級的にどんどん大きな場所でチャレンジする挑戦権を獲得する。同時に、FIREのような規模感ではなくても、リスクをとった挑戦に見合ったキャピタルゲインを得る。こういうM&Aをどんどん増やしたい。


文化的・社会的価値が高い事業へ流動性を


事業の価値を社会的価値、文化的価値、経済的価値に分解して整理したとあるコンサルティングファームのフレームワークが好きで、それら3つの価値をもった事業を営む企業を支援したい、と思って仕事をしてきた。GOZENをやり始めて1年、この方針がもう一段具体化した。


自分のライフワーク、GOZENのパーパスは、社会的価値、文化的価値をもった事業体にM&Aによって流動性を供給して、経済的価値を高めることだ。交換が生まれるほど、売り買いが活発になればなるほど、つまり市場原理に則れば則るほど、売り買いされる事業体の経済的価値は上昇する。そのマーケットの拡大に比例して、「社会にいいことをしているけど儲からない」「好きなことができているけど生活は不安定」という社会の不が消えていく。もちろん全ての事業がM&Aに耐えうるわけではないけれど、それでもEXITのオプションがあるかないかは、起業家、クリエイターの心理的安全性の改善に寄与する。金融はそもそも収益性が高い産業だ。その中で生まれたM&Aという手法を、富める者がさらに富むためではなく、まだ見ぬ美しいなにかを生み出したいと思うクリエイター、社会をよくしたいと思う起業家に提供して、美しさと正しさでメイクマネーできる世界線を産んでいく。


今回は、社会への「思い」に光をあて、「生きる」を後押しするメディアであるFocus Onと特別にタッグを組んだ連載企画として、実際にM&Aを使いこなして社会に価値を生んでいる起業家のインタビューコンテンツをお届けしていく。M&Aは”勝者が弱者を食う”ものでもないし、売却企業の”身売り”でもないし、買収企業の全てが強欲な”ハゲタカ”でもない。ヘルシーに、強かに、矜持を持ってM&Aを行い、事業成長と自分のアンデンティティにぴったりのライフキャリアを実現している起業家、クリエイターの思考を、一人でも多くのビジネスパーソンへ届けていきたい。


2023.6.29

文・布田尚大/ソーシャルM&A®️ファーム GOZEN




… EVENT INFORMATION …- GOZEN presents - 「OYAOYA」と「貝印」がM&Aで目指す、ソーシャルグッドな世界とは?

2023/7/13(木)19:00-21:00|参加費無料|オンライン・オフライン同時開催

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GOZEN オフィシャルサイト:https://gozen.drapology.jp/


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