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守るためのM&A、届けるための数字(後編) / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略

九州でソウルフードとして愛されてきた定番アイス「ブラックモンブラン」の生みの親・竹下製菓は、佐賀県に本社を置く老舗菓子メーカーだ。今から50年以上前、一般的なアイスといえば、水に着色料と甘味料を加えて固めていた時代、バニラアイスにチョコレートとザックザク食感のクッキークランチをコーティングするという発想は、まさに革新的だった。


近年では竹下グループとして戦略的M&Aや新商品開発、他企業とのコラボを積極的に進める同社では、5代目社長として家業を継いだ竹下真由が経営を担う。代表就任以来、売上高を2倍に拡大させてきた同氏は、いかに歴史を未来へ繋ぐのか。その思いと経営論に迫る。(聞き手:GOZEN代表 布田尚大)



経営者の高齢化に伴い、「大廃業時代」とも言われる昨今。日本全国の中小企業の事業承継は大きな社会課題となっています。そんななか、ビジョンと野心をもって家業を引き継ぎ、現状維持ではなく成長させていこうとする後継者の活躍も目立ちつつあります。

シリーズ「地域企業の承継者たちとM&A戦略 ―継ぐ、拡げる、編み直す―」では、地域への貢献性、社会への公益性の視点も持ちながら、M&Aという資本主義的な手段を使っての事業成長を考える承継者たちの経営論や考え方、M&Aの新たな可能性を紐解いていきます。




▼前編

130年続く老舗菓子メーカーの「種まき」経営論(前編) / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略

後編(本記事)

守るためのM&A、届けるための数字(後編) / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略



家族や社員をきちんと守れるかという判断軸


布田:これまでいくつかの企業をM&Aされ、グループに迎えられてきたなかで、PMIの実務面はいかがでしたか?


竹下:目指していたブランドとの掛け合わせで新商品をお届けするところについては、比較的分かりやすく実現できているのではないかと思います。ただ、それぞれの企業文化や制度が違うなかでどう統合していくか、そもそもどこまで統合した方がいいのか検討するプロセス含め、時間はかかりますよね。今後はそれぞれの仕組みで良いところを抽出し、横展開する作業をもっと進めていきたいと思っています。


竹下製菓は2020年10月、埼玉県のアイスメーカー「スカイフーズ」を、
2022年1月には、岡山県のパンメーカー「清水屋食品」を完全子会社化した


布田:実際にM&Aを検討する上では、どのように案件を選んでいますか?


竹下:基本的には全体の戦略に合わせて、業界は絞りつつ、相乗効果のある企業様と手を取り合えればと考えています。何より価値観として大事にしているのは、家族や社員さんたちをきちんと守っていけるのかという部分です。もし変なことをして明日から食べていけなくなったら、あるいは商品を楽しみにして下さっているお客様にお届けできなくなったら大変だ、という危機感じゃないですかね。どんな企業もそうだと思いますが、何十年と続いた歴史があったとしても、社会からの信頼をきちんと守り抜くためには弛まぬ努力が必要だと考えています。



外資コンサルから5代目社長へ転身した今


布田:竹下さんご自身は、外資系コンサルティングファームからキャリアをスタートされていますが、今、オーナーとして経営されるなかで活きている経験はありますか?


竹下M&Aが選択肢や戦略の一つとして考えられること、最初からそこまで抵抗感が大きくなかったことは良かったのではないかと思っています。あとは目上の方をはじめ、いろいろな方と接する機会を早めに得ることができたので、経営者になって人と話す上での経験値になったことが一番役に立ったかもしれません。


布田:少し角度を変えたお話になりますが、事業拡大と子育ての両立はどうマネジメントされているんですか?


竹下:子どもの学校行事にはなるべく参加できるよう時間を確保したいと思っているのですが、予定を知るより前に仕事の予定が埋まっていたりして、正直うまくいかないことも多いです。実は今日も授業参観だったのですが、このあともアポが入っているので行けなくて。「もっと早く教えて」と思ったりしています。



多くの人へ届けるために、数値目標の捉え方


布田:企業として、直近で特に注力したいことはありますか?


竹下工場設備の拡充をしっかり進め、生産性アップを目指していくことが直近の目標です。あとは、不二家さんの「ミルキー」とコラボした「ブラックモンブラン」を数量限定で発売していますので、楽しんでいただけるのではないかなと思っています。


「ブラックモンブラン milky」株式会社不二家とのコラボ商品
※2026年5月数量限定発売


布田:いずれコラボしたいブランドやIPはありますか?


竹下:私はアニメが好きなので、好きなアニメとコラボしてみたいという個人的な思いはありますが、それが商業ベースで受け入れられるかどうかはまた別の話ですから。やりたいけれど、いけるかなという感じです。


布田:今後、中長期的に意識される定量的な目標はありますか?


竹下:分かりやすく言うならば、売上高100億であり1,000億です。上限を引くとそこに向かって収束してしまうので、なかなか超えづらくなる。だからこそ、高く置いておくという感覚です。ただ同時に、ある程度具体的な数値目標がないと、人やお金は動かせない。「多くの人に届けたい」という思いを現実に形にしていくために、数値目標は置いていくものだと思っています。


 POINT 
・ 守るべき人の存在が、M&Aの判断軸として機能する
・ 数値目標は上限を決めるものではなく、「届けたい」という思いを形にするための手段



2026.6.12

取材・布田尚大/M&Aナレッジカンパニー GOZEN

文・Focus On編集部




▼前編

130年続く老舗菓子メーカーの「種まき」経営論(前編) / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略

後編(本記事)

守るためのM&A、届けるための数字(後編) / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略



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