Focus On
森實泰司
株式会社クジラボ  
代表取締役
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or九州でソウルフードとして愛されてきた定番アイス「ブラックモンブラン」の生みの親・竹下製菓は、佐賀県に本社を置く老舗菓子メーカーだ。今から50年以上前、一般的なアイスといえば、水に着色料と甘味料を加えて固めていた時代、バニラアイスにチョコレートとザックザク食感のクッキークランチをコーティングするという発想は、まさに革新的だった。
近年では竹下グループとして戦略的M&Aや新商品開発、他企業とのコラボを積極的に進める同社では、5代目社長として家業を継いだ竹下真由が経営を担う。代表就任以来、売上高を2倍に拡大させてきた同氏は、いかに歴史を未来へ繋ぐのか。その思いと経営論に迫る。(聞き手:GOZEN代表 布田尚大)
経営者の高齢化に伴い、「大廃業時代」とも言われる昨今。日本全国の中小企業の事業承継は大きな社会課題となっています。そんななか、ビジョンと野心をもって家業を引き継ぎ、現状維持ではなく成長させていこうとする後継者の活躍も目立ちつつあります。 シリーズ「地域企業の承継者たちとM&A戦略 ―継ぐ、拡げる、編み直す―」では、地域への貢献性、社会への公益性の視点も持ちながら、M&Aという資本主義的な手段を使っての事業成長を考える承継者たちの経営論や考え方、M&Aの新たな可能性を紐解いていきます。 |
▼前編(本記事)
130年続く老舗菓子メーカーの「種まき」経営論(前編) / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略
▼後編|2026.6.12 公開予定
守るためのM&A、届けるための数字(後編) / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略
布田尚大(以下、布田):まずは竹下製菓さんの事業内容や歴史について、簡単にお伺いできますか?
竹下真由(以下、竹下):もともとは西洋菓子を個人で製造販売していたそうで、それが130年ぐらい前の話です。60年前ぐらいからは菓子が夏になると売れなくなる、いわゆる「夏枯れ」対策として、夏でも食べたくなるような冷たいものを作ろうじゃないかと、アイスクリーム事業を始めたと聞いています。

竹下 真由
1981年生まれ。東京工業大学大学院社会理工学研究科経営工学専攻修士課程修了後、アクセンチュアを経て、2011年に竹下製菓へ入社。2014年から商品開発室長、2016年に同社代表取締役社長へ就任。
そこから「ブラックモンブラン」というヒット商品が生まれ、徐々にアイスクリームの会社として認知が広がるとともに、売上比率としてもアイスクリームの方が高くなっていきました。「ブラックモンブラン」は発売開始から57年を迎えました。既存商品のブラッシュアップをしつつ、同時に次世代の柱を育てるべく、二番手・三番手となるような新商品の開発にも力を入れているのが現状です。
布田:竹下さんが社長を継がれてから約10年、さまざまな企業とのコラボレーションやM&Aにも積極的に取り組まれている印象があります。そういったチャレンジするカルチャーは、もともと竹下製菓さんのDNAだったのでしょうか?
竹下:そうだと思います。それこそお菓子を作っているなかでアイスクリーム業界に参入したこと自体、大きなチャレンジだったと思いますし、お菓子と一括りに言ってもものすごく種類が多い。弊社としても、時代のニーズに合わせた商品を作り、新しいものにチャレンジすることをずっと繰り返してきたんです。今でも作っているお菓子は、そうした歴史の中で生き残ってきたものや新しいものが混在している。常にチャレンジし続けているので、今が特別新しいわけでもないと思います。
布田 尚大
M&AナレッジカンパニーGOZEN代表。2022年、3年間経営したボディポジティブなランジェリーブランドfeastをM&A。4年間取締役社長としてPMIに従事し、事業成長を実現。GOZENを立ち上げ、老舗百貨店高島屋、Forbes Japanでアワード受賞企業、M&A時24歳の若手起業家の事業など、幅広いM&Aの成約をサポート。ハフポスト日本版、M&A Onlineなど、取材・執筆実績多数。
布田:竹下グループとしてホテル事業も展開されていますよね。ホテル事業は、どのような経緯や思いで始められたものだったのですか?
竹下:今から30年ぐらい前、佐賀駅の駅前にはチェーン系のホテルなども今のようにはなかった気がしています。当時父は、人が働ける場所・集える場所を作ることで賑わいが生まれれば、そして地域への貢献にもなればと考えて、飲食店などが入ったホテルを作ることにしたと聞いています。
たとえば、マンションを建てれば人は入るかもしれないけれど、働き場所にはならないし、それではちょっと面白みもないよねと、そんなことを言っていた覚えがあって。土地の活用方法を考えるなか、いろいろな提案も受けたらしいのですが、おそらく父のビジョンに一番しっくり来たものがホテル事業だったんでしょうね。
とはいえ、運営のノウハウはなかったので、パートナーを得ようとフランチャイズ先を探して提携したことは、一つ良い判断だったのではないかと思っています。
布田:昨今のアイスクリーム市場について、全体の販売金額は伸びているというデータもありますが、竹下さんはどのように見られていますか?
竹下:危機感は常に持っています。市場は伸びているように見えますが、単価が上がっているとはいえ、人口は減っていく一方です。これだけ原材料費と人件費が上がって、1本あたりの原価も2倍3倍と上がりつつあるなかでは、数量ベースだけを見て伸びているとは言い切れません。冷暖房が完備され冬でもアイスを食べるようになったとはいえ、夏はあまりに暑すぎると売上が落ちてしまいます。
布田:そういった危機感が、M&Aの積極活用にも繋がっているのでしょうか?
竹下:「ブラックモンブラン」だけではなく第二、第三の柱を育てる上で、商品開発だけでは時間も労力も資金もかかりますし、いつ柱に育つか明確に言えません。だから、同時進行でいろいろな種まきをしていかないと、安定した収穫は得られないという考え方が出発点です。もちろん社内での育成も行いますが、外からリソース・技術・ブランドをお借りして育てていく。そのうちの手段の一つがM&Aであり、ブランドや技術力のあるところをグループ内に迎え入れるという取り組みに繋がっています。
ただ、前提としてそうした取り組みができるのは、やはり既存の柱である「ブラックモンブラン」があるからこそでもあります。現在のお客様により楽しんでいただけるようなコラボやフレーバー展開、商品そのもののブラッシュアップにも同じくらい力を入れています。(後編へ続く)
POINT ・ 歴史を守るためにも、外部のリソース・技術・ブランドは柔軟に活用する・ M&Aは必ずしも攻めの選択肢ではない。攻めと守りのバランスの取れた盤石な挑戦の基盤を作る手段である |
2026.6.11
取材・布田尚大/M&Aナレッジカンパニー GOZEN
文・Focus On編集部
▼前編(本記事)
130年続く老舗菓子メーカーの「種まき」経営論(前編) / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略
▼後編|2026.6.12 公開予定
守るためのM&A、届けるための数字(後編) / 連載:地域企業の承継者たちとM&A戦略
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