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私のきっかけ ― 『仮面の告白』著:三島由紀夫

社会に思いをもって行動するイノベーターたちは、その半生の中でどのような作品(書籍・音楽・映像など)と出会い、心動かされてきたのでしょうか。本シリーズでは、社会に向かって生きる方々にお話を伺い、それぞれの人生の“きっかけ”となった作品をご紹介していきます。



… 今回作品をご紹介いただいたイノベーター 

株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン 成宮正一郎

代表取締役社長

1977年生まれ。福岡県出身。大学卒業後、雪印乳業株式会社(現 雪印メグミルク株式会社)に入社した。司法書士事務所、不動産事務代行会社を経て、2007年に前身の株式会社マザーズエスクローへ入社、2021年に代表取締役社長に就任。

https://www.ea-j.jp/





     人生のきっかけ    
 『仮面の告白』著:三島由紀夫

孤独な浪人生活の始まりに恩師から手渡された一冊、それが三島由紀夫の『仮面の告白』だった。本書は、当時の社会ではタブーとされていた性的指向や青年期の葛藤などをありのままに描いた自伝的小説であり、三島が作家としての道を拓いた作品でもある。圧倒的な文章力で綴られる内面の洞察は、多くの人に衝撃をもたらした。成宮氏にとって、それは自身の本質とは何かを問いかけられる体験だったという。



きっかけの紹介

きっかけとなった作品はありますか?

大学受験の時に、高校の古典の先生から三島由紀夫の『仮面の告白』を渡されたんです。三島由紀夫は今で言うLGBTQで、この本では当時ほぼ無名だった三島さんが、自分の性的指向や青年期までの心の葛藤を自叙伝のように赤裸々に書いています。当時は今のように寛容ではない社会の中で自分の本質をさらけ出したことによって、自分の胸の中にある「本当の自分」というものを開花させたきっかけになった作品だと本人は語っていますね。


人生の思考の変化

そのきっかけとの出会いは?


浪人生活を始める前に、「これを読んでおけ」と先生から言われて読みました。先生は当時勉強ができなかった僕に対し、「お前ならできる」と目で語りながら自信を授けてくれた恩師なんですよね。


おそらくこの本は「自分の本質とは何であるか」を問うものだと思うんです。もしかしたら先生は、当時僕の心の中にあった劣等感を見抜いていたのかもしれません。そういった感情を一回さらけ出すというか、自分の心と向き合い、「何をやりたいのか」「自分はどうありたいのか」を浪人の1年間必死に勉強しながら見つめ直せという意味だったんじゃないかと僕は解釈しています。


小説の描写は本当に赤裸々なので、初めて読んだ時は「本人はものすごく恥ずかしいんじゃないか」と衝撃を受けました。のちに三島さんは「自殺するつもりで書いた」と語っているくらい、気迫が伝わってきたんです。ここまで全てをさらけ出すには相当勇気が必要だっただろうなという思いと、本当に自分を見つめていたんだなと感じましたね。


きっかけが影響を与えた行動

そのきっかけから何を得ましたか?


自分というものについて考えるようになりましたね。浪人という暗闇の1年間、誰とも会わずに勉強をしていましたから、自分が何のためにやっているのかが分からなくなることもあったんです。そんな時に、この本は自分を見つめ直すきっかけになっていて。もちろん当時「自分は何たるか」なんて問いに答えは出ませんでしたが、やはり自分が次のステップに進むために、まずは目標とする大学に行くことに集中しようと思って、がむしゃらに毎日12時間勉強していました。


あの時頑張れたという経験自体が自信になりましたし、それまでの人生で自分と向き合う機会が全くなかったので、1年間を意味あるものに変えてくれた本であり、そのきっかけをくれた当時の先生には本当に感謝しています。




成宮正一郎の生き方がここに


不動産取引の利便性・効率性・安全性を向上させる
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